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「結果を出す前に対価を求めないほうがいい」トレーナー活動の極意

インタビュイー: 大松亮輔さん
インタビュアー: 樋口周人

トレーナーってどんなことするんですか?

今回はトレーナー活動をしてるっていうところでお声掛けさせていただいたんですけどなぜ理学療法⼠というお仕事を選ばれたんですか?

僕は中学校3年⽣の時に肩を怪我してしまって ⾼校に上がってからも肩の痛みがずっと残っててそこでお世話になった⽅が理学療法⼠の先⽣でこういう仕事があるんだなと思って興味を持ったのがスタートですね。

今活動中の中心になってるトレーナー活動に関してはPTになった時点で興味が出たのか学⽣の時点で興味があったのかどちらだったんでしょうか?

僕を担当してくれていた先⽣は個人で起業されている方だったので当時から色んなチームのトレーナーとかもされてたんですよね。 そういうお話しを聞いていたので野球のフィールドワークっていうのが理学療法⼠の仕事としてあるんだって思ってて学生時代から意識はしていました。 

となると、理学療法士になったらこういうトレーナー活動をするっていうのがまず頭にあって学⽣時代を過ごすわけじゃないですか。 そうすると学⽣のうちからトレーナーになることを⾒越して、ご⾃分で情報収集をされたり実際トレーナー活動みたいなことを⾒学⾏ったりとかってされてたりしたんですか?

 ⾒学は常に行きたいと思ってましたけど当時は身近にトレーナ活動を体験できる世界を知らなかったし、コネクションもなかったので見学自体は行ったことがないです。代わりといってはなんですが、養成校時代に⾃由テーマで症例発表するという課題があったんですが学⽣時代のとき仮想で野球肘の症例を作って発表してみたりとか。 卒業研究のときにいろんな⾼校を回ってピッチャーの重心動揺計を測ってみて障害との関係があるのかとか調べたりしてました。

 今されているような活動に直結しそうな具体的な⾏動を学⽣のうちからされてたんですね。

見学に行けなかった分、余計に今自分ができることを探したのかもしれないです。

最初の就職先もトレーナー活動を意識されて選ばれたんですか?

うーん・・・。というよりは、むしろこのときは野球のことを知りたいという意識が大きかったかもしれないですね。入職してから職場がトレーナー活動禁止なことを知ったんですけど野球のことが勉強できればいいと思っていたので特に気にはなりませんでしたね。

野球について突き詰めると振り切っていたんですね。トレーナー活動の⽅にお話を移したいんですが、今⽇も夜遅くに帰ってこられたじゃないですか。(取材開始時には夜10時を過ぎていた) 1⽇のスケジュールってどうなってるんですか?

 平⽇は8時半までに病院に⾏って、業務終了が⼀応6時半ですけど、今僕が働いてるクリニックは学⽣を含めたスポーツ選⼿がいっぱい来てくれるので、時には夜8時とかぐらいまで選⼿と⼀緒に治療したりトレーニングしたりっていうことをさせてもらってます。 ⽔曜⽇に関してはクリニックが半日なので、野球選手のアカデミーみたいなところがあるんですけど、そこにお邪魔して色々と指導しています。 同じく土曜日も半日出勤なので不定期で社会⼈野球チームに訪問してる感じですね。

野球選手のアカデミー(塾)というのはチームではなく、個人の野球スキルを伸ばす場だということでしょうか?

まさに!チームっていうよりかは野球選手のためのトレーニングの勉強に選⼿たちが来てくれるっていう感じです。 ⾃分が⼊っている時間帯は⼤学野球とか社会⼈野球ピッチャーのクラスを担当しています。

こういった団体は、読者にとっては初めて耳にする方も多いかもしれませんね。要はチームとして、タイトルを⽬指すわけではなく、⼀個⼈がトレーニングスキルやコンディショニングを学ぶ場ということですね。 こういった団体は野球界では⼀般的なんでしょうか。

そうですね。関東関⻄はちょこちょこあるみたいですね。現在アカデミーの代表をされている⽅が、アメリカ・カナダ・メキシコとか、あとは韓国・台湾のプロ野球で活躍された⽅なので、海外での経験を日本にも取り入れているんだと思います。

野球選⼿としてのスキルに特化したプラットフォームのようなものですね。アカデミーを利用している選手が所属しているチームの監督やコーチの指導と違ったりしたとき、問題が起きそうな気がするんですけど、そこら辺ってどう対応してるんですか?

実際はあると思います。ただ、アカデミーのコンセプトとしては強要ではなく、選手自身の引き出しを増やすということに重きを置いているので、こうしなさいとかではないからまだ順応できるかなと思います。

そんな中でも理学療法士という立場でピッチャーに動作指導をするうえで葛藤とかあったんじゃないでしょうか?

確かにありました。以前ジュニアホークスっていう小学生の選抜チームのコーチをされていた⽅がいらっしゃって、その方の考えでは、良いピッチング動作へ繋げるためにフィジカルの要素があるんだよっていう方針なんですよね。 良い動作(ピッチング)の前に必ずフィジカルの要素っていうのが絶対あるからそこを、僕に聞けって選⼿たちに⾔ってくれてたのを経験したときに、そこでやっと野球界に理学療法士として関わるうえでの⾃分の住み分けができましたね。今は割と自分の役割は整理できているつもりです。

なるほど、そんなエピソードが・・・。そこで、今聴きたくなったのですが、理学療法士としてトレーナー活動をするうえで⼼がけていることってなんでしょうか?

⼀番はチームとか指導者の⽅がどういうことを大事にされているかっていうのをベースに置いとかないと、それと全然違うことしても受け入れてもらえないので、まずはそこのコミュニケーションをしっかり取ることかなって思います。

僕の勝手なイメージだと、超有名なコーチが颯爽とやって来て、⾃分独⾃のトレーニングメソッドを選⼿に刷り込んでいくみたいなのが一般的なのかなと思っていたのですが、現場で活躍されてるトレーナーさんって皆さん、選手以外のデマンドも吸い上げながら選⼿たちにトレーニングスキルなんかをしっかり還元してるんですね。

実際は2パターンあると思うんですけど、トレーニングって臨床に出たら色々と見たり聞いたりするように理論っていうのがたくさんあるじゃないですか、なのでトレーナーの選考理由がトレーニング理論に重きを置いているのであれば、チームの方針というよりかはトレーナーのトレーニング理論が色濃く反映されるシーンもあると思ってます。結局のところチームが僕たちに何を求めているかによって変わってくるということですね。

結局はチームから声をかけてもらうということが、トレーナー活動を生業にするうえで重要になってくると思うのですが。声をかけられやすくするっていう戦略的なことを考えたときに、確固たるトレーニング理論を持つほうが良いのか、チームの方針に柔軟に対応するほうが声をかけられることが多いのか。どちらででしょうか?

PROFILE

  • 大松亮輔さん

    2012年 理学療法士免許取得
    2019年 NSCA cscs取得

    これまでにプロ・アマ含めた野球選手のリハビリテーションを多数実施、…現在はクリニックで勤務しながら、社会人スポーツチームにトレーナーとして帯同するなど活躍を続けている。
    プロ野球選手の自主トレーニング帯同経験もあり。今後の活躍が期待される。