ジユウニハタラク

データサイエンスを武器に展開するPTのキャリアとは

インタビュイー: MITTIさん
インタビュアー: 舩津康平

長く勤めるから成せることがある。そして人の繋がりを大切に個を活かす。

一般的に20年間、PTの業務にどっぷり浸かってたらPTの業務しかできない人がほとんどだと思うんですよ。 30〜35歳ぐらいから違うことしたいなって思ってても、守るものができて、その職場から動くことにリスクが生じる場合が多いですよね。

はい。

それによって、リスクを背負わない選択をして自分の強みを活かしきれない人もいると思います。MITTIさんの事例は中年以降の人に明るい話だと思いますが、これから中年以降かつ同じ職場でキャリアチェンジをする上で必要な要素ってありますか?

職場の中で違うことを依頼されたら逆にそこは美味しいことかなとか思って、とりあえず飛び乗るみたいなことは続けてました。笑
個人で頑張ってるだけだと、「本当に大丈夫なのかな」と漠然とした不安はもちろんありました。ただ運動器の病棟、回復期病棟と環境が変わっていったのは刺激になって良かったかもしれないです。

長く勤めていると、良くも悪くも自分でレッテルを貼っちゃいますよね。フレキシブルに対応して同じ職場内でも刺激を作り続けていたことが、今の業務に至った要因かもしれないですね。

⻑くいるからこそ他部署と連携が取れるし、リハビリの部署のトップの人に信頼を置かれてるからこそ頂ける仕事もあると思います。
逆に職場が変わると、今見せてもらえているデータって見せてもらえないと思うんです。 そういう意味で現場の中で、分析ができる人って貴重になってくると感じてます。

圧倒的な競合優位性…
次は、MITTIさんの病院外部でのお仕事についてお聞かせください。なんでも福岡県理学療法士会から依頼を受けたとか。
どんな経緯で仕事をいただいたんでしょうか?

まず自分がデータサイエンスの勉強をして資格修了した後に、Rが医療統計以外にもデータ分析やグラフ作成にとても有効なのにほとんど知られていないなと感じました。また医療統計は必要なのにどうすればいいかわからない人は過去の自分も含めて多いだろうなと感じていました。そこで勉強してきたことや新たに学んだこと、気づいたことをブログに書いたり、SNSで挙げてました。その時にSNSのDMで勉強会の講師をしてほしいと。

ほうほう。

DM(ダイレクトメール)で氏名・所属・連絡先を交換して、その後きちんとメールで講演依頼をお受けして実際にあったりして内容を詰めていきましたね。
ちなみにその時は匿名でSNSをやっていたんです。福岡県の理学療法士だという確信があったようです。笑

そうだったんですね。笑 講演はどんな内容だったんでしょうか?

福岡県理学療法士会の学術研修大会の中の、統計セミナー・研究支援セミナーでした。匿名なのに声をかけてもらった玉利先生(現 令和健康科学大学教授)には頭が上がらないです。

じゃあ、玉利先生はMITTIさんの名前も分からない中、何を見て仕事を依頼されたんでしょうか?

お聞きした話ではTweetの内容から、
①統計学について付け焼き刃の表面的な理解ではなく、理論的に学ぶ姿勢が伺えたこと
②何より何のために統計学を使うのかという「目標指向性」を持って統計学に向き合っていること
が感じられたのだそうです。

ほうほう。
Tweetとか情報発信するときに人に信頼してもらえるように意識したことってありますか?

 「この人と繋がりを続けていきたいな」っていう人の信頼を裏切らないように思っているかもしれないです。

それをTweetや記事の内容とかで表現していたと。

そうです。フォロワー数稼ぐためとか収益目指すためよりも、自分が尊敬できるような方達と繋がって「こいつ面白いな」と思ってもらえる方が長く続けられると思いますし、 途中でつまずいたりもしにくいかなと思います。あと資料を公開する時はある程度根拠が間違ってないかとかは、かなり推敲します。

なるほど。マネタイズしたい人ほど、MITTIさんみたいな心構えが必要かもしれないですね。マネタイズしようと考えると、今までもらった信用をそこで崩すみたいな印象があります。

はい。本当にすごい人たちは信用がお金を生んでいますが。中途半端な人は中途半端な時に信用を切り崩しちゃってるような気もします。やっぱ人との繋がりは資産だなって思いますね。Twitterして一番よかったなと思うのは、繋がりが増えていったことですね。繋がれたことで新しいお話を頂いたこともあります。

Twitterやブログとかの発信において、仕事依頼を狙うのではなく自分の能力をつけることを優先した方がいいですかね?

そうですね。自分が勉強したことを発信するだけではなくって、ここまで勉強したとか分からなかったことを出しながらTwitter上でいろんな人にアドバイスもらったりとかしてました。そうしてたら逆に周りの人たちが困ってる時、自分から発言できることも増えてきたりとか。結局、お互いにやりとりができるようになってきてから、声がかかったような気もするので。

今いろいろお話を聞けてめちゃくちゃ楽しかったです。今後、理学療法士×データサイエンスでどんな価値を生み出せるか、持論はございますか?

そうですね…
PTって評価して仮説を立てて再評価する流れが元々あると思うので、このサイクルを色んな現場で使えるんじゃないかなっていう気はします。
例えば、どう評価しながらやっていくともっと良い職場環境になるのか、みんなが少しでもハッピーになるのかみたいな視点で評価していくみたいな感じ。

はいはい!

臨床をずっとやってきて、自分の中でこの患者さんはこうなるだろうなっていうセラピストの暗黙知みたいなのってあると思うんです。
でも、PTが「当たり前だよ。これはこうなるよね」と思っていることは社会の中で共有されてるのかなって思うことが結構あってですね。

なるほど…?

セラピストの予後予測をどうにかして見える形にすることで社会の中で、大体このときはここまで良くなるらしいみたいな情報が社会でもわかるんじゃないかと。

イメージつきました。

そんな時にデータ分析や統計学の知識を使って自分たちが思っていることを社会にわかりやすく伝えていくことが必要なのかなって思ってます。
そしてセラピストの暗黙知が社会の中でももっと見やすい形になって、色んな判断になるとか、どの評価を使った方がいいのかみたいなディスカッションになってくるといいのかなみたいな。

データサイエンスを使って見える化して社会還元するっていうのですね。 まさにデータサイエンスを学んだPTしかできない仕事ですね。
遂に、最後の質問です。MITTIさんにとって「ジユウニハタラク」とは?

自由になりたいから働くというよりも、自分が得意なところとか、自分の個を活かしながら働くことができると、それは「ジユウニハタライテイル」ことと近いのかなって感じます。逆に自分はそういう形ではいろいろ興味ある仕事を頂けているな。 やっぱり自分のことを知ることで「ジユウニハタラク」ことになるのかなと思います。

PROFILE

  • MITTIさん

    2002年に理学療法士として回復期リハビリテーション病院に就職。
    脳卒中患者を中心に診療を行いながら、データサイエンスを用いて研究活動、病院経営の意思決定に繋がるデータ分析などの価値を生み出している。