ジユウニハタラク

「ニーズを形にするのが楽しい」行政機関のクリエイティブな理学療法士の実態とは

インタビュイー: 西田紋奈さん
インタビュアー: 舩津康平

市役所の仕事としてコレを成し遂げたい

ここからは行政の理学療法士の職場環境を聞いていきます。私の知り合いの他県の行政リハビリ職はかなり大変そうなんですが、西田さんの1日の仕事スケジュールってどんな感じなんですか?

スケジュールは区や部署によって全然違いますね。人口が一番多い区にいた頃は窓口業務をしながら、受けた申請の事務処理を合間でして、地域の訪問があれば合間に地域に出て、戻ってきたらまたひたすら窓口業務と事務処理して・・・を繰り返す日々でした。人口が比較的少ない区は日中で事務的な業務をする時間を取れていました。今は窓口対応がない部署にいるのでひたすら企画調整や内部会議、関係機関への訪問などが一日の中心となっています。

時期によって忙しさが変わったりしますか?

繁忙期もあります。区役所だと、いろいろ手続きの更新時期とかが重なる時は殺到するし、訪問も相談対応も電話対応も一気にドンっと来る場合はあります。その時は多少の残業はあります。

そうしたら、子育て世代には優しい環境でしょうか?

子育て中であれば、残業についても配慮してもらえます。産休制度は8週前から取れますし、育休ももちろん皆さん取られています。最近は男性で育休や時短勤務を利用する人も増えていますし、子育て支援は整っていると思います。

男性はどのぐらい育休を取っていますか?

私は取得率までは把握してないですが、男性でも育休を取る方が多い印象です。

職場の雰囲気も重要ですよね。子育てを歓迎する風土なのかどうかはどうでしょうか。

私は嫌な雰囲気を感じたことはないし、制度を利用してきた先輩たちもたくさんいるし、協力的な上司や同僚に恵まれてきたので、根本的には肯定的な環境だと思います。年休は最大40日あるし、「一時間早く帰って発熱した子供を迎えに行きます!」という感じで時間給を取ることも柔軟に出来ます。

改めて考えてみると、市が積極的に良い働き方を取り入れてロールモデルになると望ましいですね。

確かに。テレワークとかペーパーレスもだいぶ普及してきていますね。

ありがとうございます。あとキャリアの話をお聞きしたくて。キャリアアップの選択肢としては職位が上がっていくのがメインでしょうか。

主査職・係長職までは試験制度があって、年功序列ではなく能力評価として試験に受かれば誰でも昇任できるようになっていますが、リハビリ職はまだ人数が少ないので試験制度は整っていません。今後変わっていくかもしれません。

西田さんは市役所でのキャリアについて、最終的にどのようなことをしていきたいか野望があるんですか?

野望(笑)市役所の仕事としてどんなことを成し遂げたいかを話します。一番は、リハビリ職の強みや役割がもっと地域で発揮できるような地域作りと組織作りを進めたいです。退院した後も含め、地域生活が当然長いので、生き生きと地域生活を長く続けられるよう、介護予防や重症化予防にリハビリ職の力を発揮できれば、北九州市の一番の課題に対応できると思います。高齢化が進む北九州市にとっては、最もと言って良いほど重要で求められている職種だと思っているんです。

実現すると素晴らしいですね。

重症化予防とか介護予防についてはまだまだ資源が少ないと思っています。だから病院や事業所で経験を蓄積しているリハビリ職の方々に協力をもらって、知識とかスキルを介護予防・重症化予防にどんどん流してほしい。そのための報酬はもちろん活躍できる地域の仕組みとか、それを受け入れてくれる地域作りとかに今一番力を注ぎたいなと思っています。

規模が大きな話ですね!

この北九州市でリハビリ職が一丸となって役に立ったという実績を示して全国に発信したいと思っています。

では今のお話を踏まえて、今のご立場から医療機関に働く理学療法士に何を伝えたいですか?

私が言うのも何ですが、ぜひ行政と一緒に一丸となって新しい分野に踏み出していただきたいと思っています。調べてみると、リハビリ職の方は新しい分野に興味を持ってくださっている場合は多いんですが、所属施設の理解が無いと活動しづらいことが分かったんです。そこで私たちは、リハビリ職個人ではなく、所属する機関へ協力を依頼していく体制を進めることにしました。私達はもちろん活動に協力していただけるよう、医療機関や事業所に向けて発信するのですが、なかなか声が届きにくい。そこで、ぜひ地域生活を支える介護予防や重症化予防に興味を持っていただき、中から声をあげて頂けると嬉しいです。

具体的なワンステップとしては医療機関に勤める理学療法士は何ができるでしょうか?

北九州市に限るかもしれませんが、地域リハビリテーション支援センターを拠点として市内の医療機関や事業所等に従事するリハビリ職を地域に派遣する体制の仕組みである「地域リハビリテーション協力機関」の登録を開始しています。現在(2023.5.9)、27の施設が登録してくださっています。まずはこのような取り組みや地域のニーズに興味を持ってくださり、地域と繋がる機会があれば実際に参加していただくことで、私たちリハビリ職がいかに求められていて、地域に貢献できるのかをすぐにご理解いただけると思います。また所属先でも北九州市のこの事業について、話題にしてくださるだけでもありがたいです。詳細についてはいつでもご説明に上がります!

これは興味深い仕組みです。

これが地域リハビリテーションと地域包括ケアシステムの充実に直接繋がるので、この取り組みに所属機関単位で参加してくださると本当にありがたいと思っています。

記事を読まれた方に期待ですね。
最後にお聞きしたいのは西田さんにとって”ジユウニハタラク”とはどういう事でしょうか?

私にとってジユウニハタラクとは、ハタラクを楽しむことかなと思います。誰でも楽しいと感じることに対しては、モチベーションや活力がどんどん生まれますよね。ハタラクを楽しむことで前向きな思考や目標、アイデアに繋がっていくことを実感しています。簡単でないことも理解していますが、ハタラクを楽しくするにはどうすればいいのか考え行動していくことがジユウニハタラクことなのではないかと思います。私はこれからも現状に固執することなく、常に自分がやりたいことはなんなのか、役に立てることはなんなのか考え、その実現に向けて楽しみながら働きたいと思います。

PROFILE

  • 西田紋奈さん

    2012年に理学療法士免許取得。北九州市役所に入職し、障害福祉センター(現地域リハビリテーション推進課)、八幡西・八幡東区役所保健福祉課で高齢者・障害者相談係を経て、現在、北九州市保健福祉局地域リハビリテーション推進課で勤務している。