ジユウニハタラク

第32回福岡県理学療法士学会タイアップインタビュー

インタビュイー: 齊藤貴文さん
インタビュアー: 縄田佳志

“教育現場の変遷”専門学校と大学で教員経験をした中での考え

教員としてのキャリアは今年で何年目になりますでしょうか?

もう17年になりますね。

今年の4月から令和健康科学大学に所属されていますが、今の1日の流れはどういう感じなんでしょうか?

8時30分に出勤して、授業があるときはその授業スケジュールの時間に合わせてなんですけど、ないときは会議がちょこちょこ入ってますね。思った以上に会議だらけです(笑)。他にも担任をやっているので、担任業務もやりつつですね。空いた時間で研究とか自分のしたいことをするって感じです。今は、思ったよりは研究に避ける時間が少ないですね。

それは大変ですね。専門学校と大学で違いはどういうのがあるのかなと思ったんですがいかがでしょう?

それをこの1年悩みながら働いてました。専門学校はどっちかっていうと、生徒に対して細かいことまで指導していったり、みっちり管理して指導していくっていうのが当たり前な感じだったんですね。けど、大学ってどちらかというと自由で、学生の主体性を伸ばすというのが、基本コンセプトなんだと思うんですよね。なので、専門学校よりはあんまりガミガミ言わないぐらいの感じです。でも、それでいいのかと教員間でも議論になっていて、ここは大学も走り始めなので、色々試行錯誤しながら良い方向に進めているところです。

そうなのですね。
多分今ってすごく難しい時代だと思うんですけれども。学生の指導で怒ったりってするもんなんですか?

皆の前で個別の名前を出して、「おい!お前!」的な怒り方はしないですね。隣に言って注意したり、授業後に呼んで指導したりはありますね。何度も繰り返していたらそういう風に指導しますかね。1回ぐらいじゃ、そこまで厳しくは言わないですかね。
気になる学生は面談して何でそうなってるのかって言うのを話し合うと、例えば、そもそも夜遅くまでゲームしてるとか他の問題だったりするんで。まずは、そっちを改善していこうかっていうふうに指導していく感じです。目の前で起きている現象だけで、やみくもに怒るってことはほぼないですね。

怒ったりするのも、ちょっと前とまた違うんじゃないですか?皆の前で怒ったりとか、シチュエーションとかも配慮が必要になってきますよね。

問題行動をする学生って、全員じゃないけどどこか教員を信用してないところがあるんですよ。そんな状況で怒られたらもう逆効果なんですよね。教員はその子に改善してもらいたかったり、いい方向に進んでもらうために怒っているはずなのに、怒ることで逆効果になっているのなら、そもそも怒るっていうやり方が違うって思うべきですよね。その子がいい方向に行けるんだったら、怒らないやり方を選ぶべきなんじゃないかなって。信用していない人の話には誰も従わないですもんね。時代に合わせて、学生に合わせて指導の仕方を変えていくってところですね。

そういう学生さんの抱えてる悩みっていうのは、話していると感じたりするんですか?

めちゃくちゃわかりますよ。目の前に起きている現象の背景には、その人それぞれのストーリーがありますからね。恐らくそれは臨床での患者さんでも同じで、その人の背景や置かれた環境を理解してあげないと適切な対応はできないと思いますね。

教員として17年の間で、学生との関わり方やその他にも変わったなということは何かありますか?

私が教員になった15年くらい前って教育現場が、その前までとは全然違うとまでは言わないぐらいのちょうど過渡期だと思うんですよね。学生の意欲とか学力がそれなりにあった中で教育できていたのかなと。ただ年々感じていることもあって。以前と比べて受け身の学生が増えたなって印象です。国家資格というよりも何か簡単に取れる民間の資格を取りに来てるんだろうなっていうぐらいの感覚の子がちらほらいるように感じてしまいますね。

それは最近の学生でってことですか?

そうです。もちろん全員っていう訳ではないですよ。いつの時代でも頑張っている学生は多くいます。ただ以前よりも増えたなと感じています。高校で試験勉強をしたことがないと言っている学生がいますし、答えを求めて自ら考えようとしない、自ら興味を持って深めようと勉強しない学生が増えている印象はありますね。

そうなのですね。それは何か先生の中で仮説があったりするのでしょうか?

これは難しいですけど…養成校に入る学生の層が幅広くなったことが一つ影響しているのかなって考えています。価値観も多様化していて、以前と同じ常識と基準ではできなくなってきてるっていうのがあります。

そんな中で、大学のあり方っていうのはどうしていくのが望ましいんでしょうか?

養成校は目先の目標だけで生き残っていくことを目的にしちゃいけないとは思っています。例えば、大学の売りを国家試験を全員合格させますとか、あそこに預ければ誰でも進級できるみたいなですね。大学として育てたい人材を明確にして、ブランドというか、魅力を創っていく必要があるのかなと。

難しい課題ですよね。学生の立場でみたときに、魅力ある大学ってどういうものになるのかなと思って。個人的には資格自体の重みとかも、学生の取り組む姿勢に影響すると思っていて。現実を知ってもらいつつも、理学療法士という職種に憧れをもってもらうことが重要だと。理学療法士の魅力を伝えるために、大学全体で取り組まれていることってあるんですか?

そこがものすごく難しいところではあるんですけども。学生に対して、将来輝ける姿を見せるべきだと。じゃないと、やっぱりモチベーション沸かないですからね。現実的な厳しいことばっかり言っても、モチベーションに繋がらなかったらあまり意味はないですからね。
うちで例を挙げれば、医工連携を前面に出してやっているんで、工学の先生とコラボしてこういう研究をやってるよとか、それが社会でこういうことに生かされてくるんだよっていうことを学生に伝えていますね。あとは、1年生のうちからユニットローテ―トって言って、各教員の専門性を紹介するような時間があったりするんですよね。3・4年生になったら、ゼミに分かれてそれぞれユニットに所属して、興味ある分野の中で、自分には何ができるのかっていうことを追及してもらう予定です。それによって、魅力がどこまで伝わっているのかというのは正直わかんないですが。ただ、医工連携やユニット制という大学の特徴を知って、それを求めて入学してくる学生もいるので、少なからず魅力に感じている学生はいるのかと思います。

学生が想像している以上に理学療法士が活躍できるフィールドが多いことを知ってもらうのは大切ですよね。
ここ数年、福岡県理学療法士会の会員数、特に若手の数が減っているといった課題があります。学生のうちから県士会の存在を知る機会ってあるんですか?

学生の立場からすると、あんまりないんですよ。もちろん教員として情報は提示します。ただ、県士会は学生からすると遠い世界というか、自分たちとは関わりのないものって感じている気がします。でも、日本理学療法学生協会という学生が運営している組織みたいなのがあって。その学生たちが自分たちの興味のあるテーマや講師とかも選定して、研修会の企画や開催をしているところもあるみたいです。そういうことがあると、学生も県士会と接点ができて、参加しやすくなるのかもですね。逆にそういうのがないと、身近に感じることはないだろうなって気はしますね。今の状況だと、学生に県士会とかの情報を流しても、学生が関われる点がないからあまり自分ごとにはならないですよね。今回、久々に県学会が対面学会なので、学生には学会参加してみないと声掛けはしています。

そこは本当に課題ですね。県士会の存在は知っていても、入るメリットを感じてもらえなければ、関わりとは思わないですし。僕たちの事業も、学生と何か接点ができるようなことを企画したいなと思っています。次は、今話題に出た第32回福岡県理学療法士会学会の話を学会長である齊藤先生に色々と伺っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

PROFILE

  • 齊藤貴文さん

    九州大学大学院 博士(人間環境学)

    2001年 理学療法士免許取得

    2001年 喜多村クリニックへ入職

    2007年 麻生リハビリテーション大学校へ入職

    2022年 令和健康科学大学へ入職

    Researchmap:https://researchmap.jp/saito.t