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「結果を出す前に対価を求めないほうがいい」トレーナー活動の極意

インタビュイー: 大松亮輔さん
インタビュアー: 樋口周人

ボランティアから仕事になるタイミングって?

結局はチームから声をかけてもらうということがトレーナー活動を生業にするうえで重要になってくると思うのですが‘、声をかけられやすくするっていう戦略的なことを考えたときに、確固たるトレーニング理論を持つほうが良いのか、チームの方針に柔軟に対応するほうが声をかけられることが多いのか。どちらででしょうか?

難しいです質問ですね・・・ただ言えるのは、トレーニング理論の創始者に当たる人は求められることが多いような気はします。理論って結構流行りなところもあるので、そういう理論を聞きつけた先輩や指導者が声を掛けるというのはよく見ますね。ただ浮き沈みが激しいと思うので、流行りのときにどれだけ活躍できるかでその後の活動範囲が決まってくるような感じはしています。SNSで簡単に自分の考えを発信できる時代なので余計にそういった理論は最近多くみかけるようになりました。それが良いか悪いかは別としてですね。

現時点での大松さんが、ここだけは他のトレーナーと違うぞみたいな強みってありますか?

うーん・・・。例えば野球に特化したトレーナーなので、ピッチャーであれば球速を上げる。 バッターで⾔えばホームランを打つとか。 これをやったら、パフォーマンスが上がるよっていう理論は自分にはないんですよね。⾃分の武器はなんだろうなってたまに考えるんですけど、ありきたりですけど誰よりも選⼿に寄り添いたいという熱意だけは負けないと思ってます。

選手に対する想いってトレーナー活動の根幹になるような部分だと思うので、そこにいずれ技術的な部分に自信が付いてきたときが、良い意味で恐ろしいですね。

そうなるのが楽しみですし。そうなりたいですね。 僕が選手として関わるうえでのコンセプトって、野球選⼿が野球をできるようにバックアップをしたいっていうのが一番にあるんですよね。怪我して投げれないとか、どれだけリハビリしてもよくならないとか、⾃分としては野球選⼿がフィールドで活躍できるためのサポートをしたいっていうのは絶対あるんですよね。 結果球速が上がるとか結果ホームランが打てるとかってなればいいですけど⾃分としては何ていうかパフォーマンススキル以前に 選⼿が選⼿として活躍できるようにしたいなって思います。  

それこそテクニックの部分で、トレーナー活動以外で時間をとっていることってあるんでしょうか。

テクニックですか。 テクニカル的なことで時間を割いていることといえば、今セミナーを受けるとかっていうのはできてないんですよ。 5年前ぐらいまでP N Fを勉強させてもらったりはしてたんですが、テクニックというよりかは僕としては⽇々の臨床で何とか頑張りたいと思ってます。

ここからは少し生々しい話しを聞けたらなと思っているのですが。

都合の悪いところはカットでお願いします (笑)

うちはカットとか無しなので (笑)
トレーナーの契約事情について深掘りさせてください。日本のトレーナー活動って文化的な側面からその多くがボランティアで行われている現状があると思うのですが。大松さんなりに、日本でトレーナー活動する上では少額でもいいのでお⾦をいただいて活動した⽅がいいのか、それとも実⼒がつくまでは基本的にボランティアでチームに帯同した⽅がいいのか、どちらが日本の文化に合っていると思われますか?

難しい問題ですね。 お⾦⽬的でいきなり⼊っちゃうと、あまりいい顔されないことの⽅が多いイメージはありますし、もう⼀⽅では⾃分の時間をそこに費やす以上はそれに⾒合った対価をいただくっていうのは⼤事なことかなって思います。

結果を伴わなず対価を求める行為は確かにNGですよね。

それこそお⾦の話からずれるかもしれないんですけど。 僕のクリニックにいる先輩から、お金って言うのは信頼してもらえたらそこに対価としてついてくるんじゃないっていうことを言われたことがあって。それを聞いて僕はなるべくそこだけを考えようっていうか。 お⾦お⾦っていうよりかはチームとか選⼿たちから信頼していただいて、結果お⾦がいただけるような形になったらいいのかなって思います。トレーナーとして飛び込む以上は、お金を⽬的にスタートするよりかは何でそれがしたいかっていう熱意を優先した⽅がいいんじゃないかなって思います。

この意見は大変参考になるんじゃないでしょうか。⾃分からトレーナー活動させてくださいって、⾯識のないところへ営業に⾏くときは特に注意した⽅がいいですよね。

⾃分から営業に⾏く場合は特にですね。 初めは多少の条件の悪さは置いておいて、最初は⼊らせていただくだけでありがたいっていうぐらいのマインドでいた⽅が関係性としては健全かなと思います。

では実際、どのくらいの期間活動を続けたら信頼が獲得できるんだっていうところで⼤松さんの今までの経験からご助⾔いただきたいんですが。

どうでしょうね。半年〜1年とかなのかな。 1年間は⾝を削って、、、んー。それ以上もあると思いますよね。 ⽬安は1年ですかね、区切りがいいじゃないですけど、世代が変わったりとか⼤きな⼤会が終わったりとか監督指導者が変わったりとか、1つのターニングポイントで評価されることが多いかもしれないですね。

年間を通してどういうふうに貢献してくれたかっていうのを清算して、そこで条件の話が出てくればいいってことですね。

現場で活躍できていれば契約更新をしていくと思うので、その時に相談をするとか、監督やコーチから条件面のお話をしてくれるかって感じじゃないですかね。

⼤松さんのトレーナー活動はボランティア活動ではなく、お仕事になってるわけじゃないですか?お仕事になるまでにかかった時間ってどれぐらいだったんですか?

僕はですね、最初⼤学野球のトレーナーをさせてもらったんですけど、⽇本経済⼤学の硬式野球部の⾒学に⾏って、 元⻄武ライオンズの⼆軍監督をされていた方が監督をされてたんですけれど。僕が3回目ぐらいに⾒学に⾏ったときに練習試合をしていて、 こっちを⾒ていただいたので会釈したら、「どちらの関係者ですか?」って話し掛けていただいて、「理学療法⼠をしながらトレーナー活動をしたいと思ってるんで⾒学させてもらってます」とお伝えしたら、その⽇に「うちのピッチャー陣⾒てよって」⾔っていただいて、「次来たときに改めてちゃんと契約しようね」っておっしゃってくれたんです。 そこから報酬をいただくような形になりました。

大松さんの見学の時や、仕事の姿勢が監督さんに刺さったんでしょうね。

どうでしょうね (笑)
だといいですが、監督さんとか元々プロ野球界にいらっしゃった⽅なんで、トレーナーとか周りのサポートとかっていう部分に対して、できることをしてあげようという気持ちを持っていただいたんだと思いますよ。

このお話を聞いて勘違いしちゃいけないと思うのは、⽇頃からいろんなところで準備されてるからこそ、そういう声かけをしてもらえたと思うんですよね。それも含めて実力のような感じがしました。

それはですね。
実⼒じゃなくて、監督に見えるような⽬⽴つところにいたんですよ (笑)

強い熱意でアピールするって、僕らの世代なんかは恥ずかしくてできないとかよくありますけど。 恥ずかしさとやりたい気持ちとどっちが大事にしたいことなのか天秤にかけたときに、どれだけ熱量が上回れるかは大事だと思います。

それがもう⽬⽴つところにいるっていう答えだったんでしょうね。 僕の中では感染症の影響とかで、見学に行く機会自体が減っている中、少ないチャンスでどれだけ⾃分を売れるかっていうのは⼤事になってくるでしょうね。僕は元々⼈⾒知りで、あんまり⼈と話すのは得意じゃないんですけど、そこはもうね気持ちですね。

(インタビューの時はハニカミながらお話しされることが多く、シャイな方というのが伝わってきていました)

今後の目標なんかはあったりしますか?

プロ野球に携わりたいなっていう気持ちがずっとあるので。 ⾃分としては近い将来としてプロ野球のトレーナーとして働いてみたいっていう気持ちはあります。

それはプロの球団に所属するってことでしょうか?

僕的には選⼿と関わりたいので、球団云々というよりかは、プロ野球選⼿と関わるっていう仕事に就ければって感じです。それを満たすのであれば、球団に⼊らずとも良いと極論は思ってます。

⽬標を達成するために現在⾔える範囲でいいんですけど、戦略的に動いてることってあったりするんでしょうか?

プロ野球選⼿は、⾒ようと思えばプレー動画がいろんなところにあるじゃないですか。その動画をスクショしたりして、動作分析したものをデータとして蓄積はしてます。 例えば、ソフトバンクのピッチャーなんですけど、オリックス戦のピッチング動画を撮って、それをコマ送りしながら写真を撮って、動作分析した資料を関係者の⽅にメールで送らせてもらっています。現在のピッチングフォームをどのように考えられるかなっていう意見をいただいて、自分の考えを擦り合わせるためにです。
(実際の資料を画面越しに見せていただき、熱心に説明していただきました)

目標に向かって必要なピースを確実に揃えていらっしゃいますね。ここまで大松さんの努⼒してきた部分を聞いてきたんですけど、ご家族のことも聞いてみたいと思ってて・・・

PROFILE

  • 大松亮輔さん

    2012年 理学療法士免許取得
    2019年 NSCA cscs取得

    これまでにプロ・アマ含めた野球選手のリハビリテーションを多数実施、…現在はクリニックで勤務しながら、社会人スポーツチームにトレーナーとして帯同するなど活躍を続けている。
    プロ野球選手の自主トレーニング帯同経験もあり。今後の活躍が期待される。