大学教授に聞く!? 理学療法と教育とSNS
これからの学生に求められる意思決定の力
ここからは教員としての玉利先生を深掘っていきたいと思っているのですが、現在、教授に就任されている令和健康科学大学ではどのようなコンセプトで学生を教育されているんでしょうか。
我々の学科のコンセプトは、“医工連携”です。これから学生が活躍していく社会というのは、科学技術が急速に発展してきて、その中で、理学療法も変わっていくと思います。社会構造の変化と技術の変化が加速していく中で、必要とされる理学療法を考えると、そういう未来を見据えて、我々は学生に医学と工学が連携して医療を作り上げる素地を学んでもらいたいと考えています。
先を見据えられた学科コンセプトですね。
そうですね。さらに私がこれを可能にするために必要と考えているのは情報操作能力とも言われるスキルです。具体的には情報を収集、蓄積、送信、分析、活用するという五つの要素で、ただ単に情報を集めるだけではなく、どのようなデータが収集されたら良いのか、そのデータをどう送信したら良いのか、それがどう役に立つのか、どう解釈すればいいのかといったことを含んだ能力も身に着けてもらいたいと考えています。
確かに、情報が溢れ返っている現代では正確な情報の集め方と活用の仕方は重要になってきそうです。
これらの能力を身に付け、活用できれば、社会が変わっても対応できると思います。我々のコンセプトは、将来を見据えた医工連携なので、そのためには、先ほど挙げた五つの能力を育んでいくことが大切だと思っています。
とても理解できました。先を見据えた教育が必須である一方で、学生からすれば、カリキュラム的には厳しい内容になると予想するのですが、(学生の)モチベーションのコントロールなど気を遣っている部分などあるのでしょうか?
確かに難しいですが、そもそも我々の頃とは社会が大きく変化していて、学生を取り巻く環境が全く違いますよね。だからこそ、学生たちは自分で意思決定をする能力を身につけるべきだと思っています。教員が何か情報を提示したとき、それを無条件に受け入れるのではなく、判断するための情報を自ら探して加えたり、自分の意思決定に責任を持つようにする。そうした今の時代に求められるスキルを身につけて欲しいですね。
モチベーションのコントロールも学生自身が取捨選択しながら、上手く調整しなくていけない時代になっているんですね。
なので、学生が何か迷っているとき、それは問題ではなく、むしろ必要なプロセスだと思っています。自分自身の迷いや課題に対して、自分自身で意思決定しようとすることが、その後の学びにとって非常に重要だからです。
自分の人生は自己責任であるということが学生のうちから体験できることは貴重なことだと思いますね。
私たちは教員を特定の研究領域のユニットに分けていて、それぞれのユニットを専門性の高い教員で構成しています。学生は入学してすぐに、各ユニットで教員が何を研究しているかについて学び、2年生では各ユニットで使われている研究機器を体験し、そして、3年生と4年生で卒業研究を行うため、2年の終わりに自分の意思で特定のユニットを選択するということをやってもらっています。
学科の取り組みに、学生の意思決定を促す仕掛けがあるわけですね。
私たちは、学生が自分で意思決定し、どの道を選択するかを決める機会をできるだけ提供できればと心がけていて、その後は学生自身に選択を委ねることも大切なのだと思います。
この記事をみた令和健康科学大学の学生さんは、これまでの講義を振り返ってなるほどと思うことがあるんじゃないかと期待しています。
次は、大学開設になんと2度も関わられている先生に、なかなか聞けないお話しをしていただきたいのですが、まずは大学開設に携わった経緯から教えていただけますか?
1度目は専門学校の教員として働いていたときに、専門学校から大学へ移行するための準備と大学設置認可申請を行うようにという、いわゆる業務命令として携わったのがきっかけで、2度目は現在の令和健康科学大学の設置に携わらせて頂きました。
なんでも、設置準備では書類業務がとても大変であるという情報だけは持っているのですが・・・。笑 その辺りはやはり大変だったのでしょうか?
おっしゃるとおり、大学の設置に際して、極めて細かい、膨大な量の書類業務が伴います。なぜ大学を設置しなければならないのか?から始まり、社会構造や医療情勢などの背景を説明し、大学の設置が必要となる理由を明確にすることが求められます。その後は、教育課程、カリキュラム、シラバス、施設設備、運用ルールなど、一貫性を保ちつつ全てを整合させることが必要で、勉強することも多かったです。
聞いているだけで大変そうですね。
加えて、文科省が推進している教育構想に則った形で教育計画を設計することも重要なので、文科省の教育に関する考え方をしっかりと学び、それを背景に全体の構造を整えていく作業が必要でした。この一連の作業は、徹底的な理詰めで、文科省に足を運び、何度も相談を行い、現地で確認を受ける等、一貫性と整合性を保つための徹底した努力が必要でした。
なんだか論文執筆と似ていて、先生がその役回りになったのが納得できました。
大学設立という非常に大きなプロジェクトを経験してきたのは色々な意味で良かったと思います。失敗が許されないプレッシャーの中で、数年単位で耐え忍ぶ経験を2度もできたことは、とても価値があったと思います。
まさに0から1を生み出す作業を、小さいものからとてつもなく大きなものまで繰り返されている玉利先生に脱帽です。学生の意思決定を促進する教育に花が咲くことを心より祈っていおります。
PROFILE
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- 玉利誠さん
2001年 倉内整形外科病院
2002年 誠愛リハビリテーション病院
2006年 福岡国際医療福祉学院理学療法学科専任教員
2015年 国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科理学療法学分野講師
2017年 国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科理学療法学分野准教授
2019年 福岡国際医療福祉大学医療学部理学療法学科准教授併任
2020年 国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科理学療法学分野非常勤講師
2022年 令和健康科学大学リハビリテーション学部理学療法学科教授
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2023.08.15ジユウニハタラク
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自らの創造性を表出し、いきいきと働くこと
- 天米穂さん
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