ジユウニハタラク

看護・リハビリテーション・社会福祉のサービスを経営する理学療法士の思考法を聞いてみた

インタビュイー: 瀬尾徹さん
インタビュアー: 舩津康平

何者にもなれる自分になろう。

福祉⽤具販売をされているとお聞きしました。なぜしようと思ったのか知りたいなと思いまして。

福祉⽤具の貸与事業っていうのは理学療法⼠がした⽅がいい事業だと思っているんですよ。まず理学療法⼠がやっている福祉⽤具店を謳ってやっているとこって少ないんですよね。

具体的にどんな用具に着目しているんですか?

今、力を入れているのは座位保持装置ですね。重症⼼⾝障害児に携わり出して、自分達がリハビリしている子達もリハビリしているのに少しずつ変形が進んでくるんですよね。やはり環境が大事で座位保持装置がその⼦に合っていないと体を歪めます。例えば、シーティングの基本通りに⾻盤を起こすことばかりに注力して体幹が崩れてしまっている方がいます。そこで体の構造、動きを熟知している理学療法士がその子に合った座位保持装置の作成や調整にもっと関わることが必要だと感じています。

実際にどのように座位保持装置の作成に関わっているんですか?

座位保持装置を始めようっていう意識を持った時に、たまたまキャスパー・アプローチを利用した座位保持装置を作っている人と繋がったんです。福岡で座位保持装置を作れる場所が欲しいと聞いて、一緒に協力してやりましょうと即決しました。作るのは自分だけじゃ難しいからチャンスだと思ったわけです。

本来理学療法士が何らかの形で関わって物を作った方が良い分野がまだ他にもあるんじゃないかなと思いました。それを⾒つけるときって、どんな考え⽅をしたらいいんですか?

問題意識を常に持つことですかね。例えば座位保持装置には元々疑問があったわけです。そこで「何でこうなっているんだ」とか、「理学療法⼠の自分だったらこうできるのに」とかを考えています。

自分にもそこまで突き詰めて考えてない部分はありますね。

この事業をできたらいいなと思った時に、現実的に時間とお金、人をある程度動かせる権限があるから、この思考になりやすいと思います。だから自分の影響力が及ぶ範囲を広げようとは思ってます。偉そうに聞こえないといいですけど(笑)

もう1個聞きたいことがあります。先⽣が最近力を入れてらっしゃるインクルーシブ公園(※)とは何なのか教えてください。
※障がいの有無にかかわらず、誰もが利用できる遊具をそなえた公園(引用:デジタル大辞泉)

田川地区障害者⾃⽴⽀援協議会でも活動をしているんです。⽥川の障害者の親の会の代表の⽅が東京にインクルーシブ公園ができるというニュースの切り抜きを持ってきたんです。「これ筑豊にも1個作りましょう!」となったんですよね。運良く福岡県の公園街路課の方、県議会議員とかが話を聞いてくださって、話が進んでますね。トップダウンだけじゃなくて、障がいのある子のお母さんや色んな方から意見を聞くためにワークショップを開いたりもしました。

障がいのある子が自由に遊べる場は少ないですよね。

こんな遊具が欲しいとかはもちろんですけど、駐⾞場から公園に⾏きづらい理由を挙げてもらって上に伝えることで、公園を整備したり街路を考える⼈たちの⽬線が福祉に向けてくれるきっかけになるかもしれないです。その意味でもインクルーシブ公園を作ろうとなったんです。

話の規模が大きくて進めるのが難しそうですね。

僕は地区の⾃⽴⽀援協議会の子ども部会の部会長という役職をしています。少しは影響力があって意見を挙げやすかった部分もあって話が進んでます。令和5年度から着工し、令和6年度中には完全にではないですが遊べる状態にはなると聞いています。

理学療法士とインクルーシブ公園は療育の観点から何か繋がりそうですか?

あんまりリンクしないと思います(笑)これは理学療法士ではなくて、障がい福祉施設を運営している、社会資源を創出できる瀬尾徹としてやっているのでですね。
絶対間違えちゃいけないのは地域の⼈たちに応援されることをやりたいと思っていて、そこで立場を活用する感じです。

先⽣が考えている今後10年20年、30年40年ぐらい先の理学療法⼠の未来ってどんな風に変化していくと思われますか?

淘汰されるって⾔ったら語弊があるとは思うんですけど、1個のことしかしてない限りは、その1個でよっぽど目立たないと難しいと思うんですよね。いろんなことができればできるほど、⽣き残れる可能性って⾼いと思うんですよね。なので一度僕も目指した身ではあるんですが、スペシャリストを⽬指すなら徹底的にやってほしいし、そうじゃないならいろんなことにチャレンジした⽅がいいんじゃないかなとも思います。理学療法士自体に夢がないというよりかは、個人の動き方次第で可能性はむしろ無限大だと思うので、変化を恐れずチャレンジして欲しいですよね。

力強いお言葉ありがとうございます。資格にすがり続けるのではなく資格をいかして個人としての能力を高めて挑戦していく姿勢が重要なんだと感じました。
 
最後に瀬尾さんにとって”ジユウニハタラク”とはどういうことでしょうか?

何者にもなれる⾃分になること。理学療法⼠としての⾃分、障害者自立支援協議会としての⾃分というように色んなことに影響⼒を持てる⾃分になるっていう⾔い換えができるかもしれないですね。影響⼒を持つためにやっていた感じに見えるかもしれないけど、あんまりそういうことも考えずに何ができるかじゃないかなと思います。

PROFILE

  • 瀬尾徹さん

    2006年 理学療法士免許取得
    2006年 西野病院 へ入職
    2011年 リハビリ訪問看護ステーションすばるへ入職
    2016年 りはなす訪問看護ステーションを起業