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看護・リハビリテーション・社会福祉のサービスを経営する理学療法士の思考法を聞いてみた

インタビュイー: 瀬尾徹さん
インタビュアー: 舩津康平

「PT・OT・STはマネジメント業務に向いている人が多い」。その真意とは?

双⽅からのアプローチがあるってことですね。
筑豊地区での訪問看護は激戦区と先ほどから仰ってますが、その中で事業を差別化することって、重要視していますか。

もう最初からしていますね。真似しづらいことをするというのが⼀つあって、さっき⼀番最初に⾔った理学療法⼠だからリハビリ特化型、看護師が社⻑だから理学療法⼠1⼈もいないという事業所はあるから、リハビリも看護も本気でしているのが強みなんですよね。かつ、重症⼼⾝障害児のデイサービスを運営していくのはそれなりに僕はハードルがあると思うので真似しづらい。⼈⼯呼吸器が必要な医療的ケア児も診れるということはALS(筋萎縮性側索硬化症)の方とか難病の方とかも来るかもしれない。それも差別化になっているんじゃないかなと思います。

真似しづらいことをするためには、覚悟も必要だし、資⾦や⼈が必要になると思います。どれだけ大変でも先⾏投資すべきだとお考えですか?

僕の場合「いきなりバン!」と投資してなくて10個の事業をしていますけど、全部ちっちゃく始めることしかしないんですよね。最後は⼤きいのをしたいと思っていますけど、小さいのが10個集まっているみたいなもんなんですよ。放課後デイサービス1個始めること自体は資金や人員も小さく始めることが出来る。小さく始めてそこをなるべく早く⾚字にならない体質にするだけかなと。真似しづらいことを将来的にやる構想があって、小さいことからだんだん始めていくみたいなイメージですかね。会社全体でいうと事業を多機能化することが⼀つ差別化なのかもしれませんね。

⾚字にならない体質っていうのは、業界でこうした⽅がいいっていう正攻法みたいなものがあるんですか?

正攻法というか、職員1⽇にかかる経費とかですね。つまり、お⾦が出ていくより、⼊ってくるお⾦が上回ればいいわけじゃないですか。例えば、訪問看護で⾔えば、1⽇何件以上ないとその⼈(職員)の1⽇分の⽇当は稼げていないというのが簡単に計算できるんですよね。

たしかに1日の人件費に対して、どれだけの(会社としての)収益があるかは社長以外のスタッフでも簡単に把握することができますよね。

逆に⾔えば、8時間勤務してて、4時間で職員1人の1日の人件費が賄えるんだったら、残りの4時間は違うことにチャレンジできるとも考えれますよね。なので、新しいことを始めるときに、午前中の4時間は訪問に行って、午後からの4時間は福祉⽤具レンタル事業に従事してもらう。新しくチャレンジすることなので最初は上手くいきませんでした。そういうことを踏まえて、目先の利益を過剰に意識しているわけでもないということです。

僕のイメージだと1日に稼げるだけ稼ぐというのが、いち事業としてのあり方と思っていました。事業拡大も見越して、業務時間を有効的に使おうとする視点が勉強になります。

会社として、体⼒があるうちに新しいことを始めるっていう意味もありますね。その体力をお⾦に換算するのか、時間に換算するのかっていうだけの話しなんですけどね。

瀬尾先⽣がされているみたいに、訪問看護ステーションなどを起業するPT・OT・STって今後も増えてくるんじゃないかなと。そういう⼈が経営や事業開発をするにあたって、どこから始めたらいいでしょうか?

 正直、訪問看護ステーションから始めるのは、今後はどうかなと思っていますね…。要はもう産業⾃体が成熟してしまっているんですね。でも、まだまだチャンスはあると思います。成熟産業でも誰にも負けない強みがあればチャレンジできます。まずは誰にも負けない自分になるために自己研鑽することです。

まずは市場を知るところからでしょうか。
インタビューの打ち合わせの時、「PT・OT・STはマネジメント業務に向いている人が多い」というお話をされていました。その要因って何だと思いますか。

結局⼈によるんですけどね。⼈によると思うけど、⾃然と思考回路が、問題点を⾒つけてプログラムを⽴ててそれを実⾏して、フィードバックしてまた修正していく考え⽅になるので、組織をマネジメントする思考回路が元々あるんじゃないかなと思います。あと単純に真⾯⽬な⼈が多くて向上⼼がある。向上⼼があってお金と⾃分の時間を使って勉強して、組織のためにという考え⽅が単純に多い。問題点を抽出して問題意識みたいのを常に持ちながら、どうしたらいいふうにしていくかっていうのがリハビリテーションですから。

「たまたま自分が組織の中でリーダーという役割なだけ」という表現は簡単にできますが、リーダーである以上は⼈がついてこないと成り⽴たないと思うんですよね。⼈がついてくるリーダーの定義って瀬尾さんの中にあるんでしょうか。

意識してることは、だから王道なんじゃないかと思ってるんですけどね〜。つまり応援されたり、感謝されるということを軸に事業としてやっているので、僕についてきてくれてる⼈ももちろんいると思うんですけど、だから僕が特別というよりは、みんなに応援されることをやってる会社についてきてくれてるっていうイメージですかね。事業や会社のビジョンに魅⼒があってついてきてくれているっていうイメージですね。

リーダーではなく、リーダーの掲げるビジョンについてきてくれているということですね。ものすごい納得感のある回答をありがとうございます。

あとは社長である僕が会社として⼤きくしていきたいって思いがあるから、社員は夢が持てるんじゃないのかなと思います。経営していて分かった事ですが、給料を上げるためにはその人の役職が上がるか会社が大きく成長するかしかないんです。

なるほど。ちなみに優秀な経営者(社長)ってどこで判断すればいいんでしょうか。

それはその⼈と付き合ってみないと、良い⼈かどうかってわかんないと思うんですけど、さっきの王道に通ずることもあって、ちゃんとこの事業を通して誰かのに⽴ちたいとか思って経営してないと、絶対駄⽬だと思うんです。僕のとこにも相談に来る⼈もいるんですけど、社⻑になりたいから社⻑になって会社経営するんです!みたいな考えの人って結構いるんですよね。社⻑になりたいっていう⽬的のために経営するっていう考え方が僕はおかしいなと思ってますね。

なるほど、良い経営者かどうかを判断するための質問とかありますか?

結局は、なんでこの事業を始めようと思ったのかっていうことを深掘っていけば、良い経営者の答えを聞くことができるんじゃないかなと思いますね。

経営するにあたって、リハビリの養成校って経営とか、お⾦の管理とか、あんまり教えないじゃないですか。その辺はやりながら学んでいったんですか。

僕も素⼈だったわけです。うちは今、株式会社とNPO法⼈でそれぞれ違う税理⼠さんがいるんですけど、半期に1回、勉強会してもらっているんですよね。うちの試算表とかを使ってこれがどうなったらこうみなされるとかですね。もちろん毎⽉試算表の更新されたものは経営会議とかで上がってくるから⾒るのは⾒るんですけど、細かい部分は税理⼠の方に聞きますね。

PROFILE

  • 瀬尾徹さん

    2006年 理学療法士免許取得
    2006年 西野病院 へ入職
    2011年 リハビリ訪問看護ステーションすばるへ入職
    2016年 りはなす訪問看護ステーションを起業