ジユウニハタラク

”面白いことに躊躇なく行動”を体現!! シンクタンクで働く理学療法士

インタビュイー: 松尾厚さん
インタビュアー: 舩津康平

シンクタンクの仕事に活きる理学療法士の経験は何?

例えば、私の場合何もわからない状態で介護施設のコンサルティングについて行って、「自分の知識が活かせそうだ!」とその場面に直面して気づいたわけです。医療系の資格の活かし方は、今自分が思っている方法だけじゃないと思います。

色んな場面を体験して得た気づきから、考える範囲を広げていくということですね。

実体験をしてしまったらそのあとは自由ですね。僕も今でこそ九州経済調査協会で働いていますけど、病院勤務の時はそんなこと思っていなくて、介護施設のコンサルティングを経たからこそ現在の選択肢が出てきたんだと思います。もちろん、病院勤務を否定するわけではなくて、”そのままが良いのか”を問うという意味です。

実際に多く体験することでコンフォートゾーンが広がると思うので体験が重要ですね。

はい。あと、感覚として理学療法士のキャリアにはいくつかの山があると思っています。山の頂上付近にはそれぞれ治療技術や研究で有名な人がいて、その山を若い人が登っているイメージです。

ふむふむ。

例えば、山の上にいる人が40歳代とかでまだ若かったりするじゃないですか。その人は、恐らく60歳代ぐらいまでずっと第一人者のポジションでいるわけで、20代でいきなり上のポジションに来る人ってほとんどいないじゃないですか。

自分が進んでも上のポジションにいる方も同じように進むから差が縮まらないことはありますね。

今、20歳代で理学療法士で目立っている人って、多分第一人者がいない違う山を登ってるんだと思います。例えば産業理学療法とか保険外のリハビリとか、教育系の山だったりします。自分が歩いてきた道が振り返れば山になっていた、という感覚が必要かもしれません。

だとしたら、どの部分の山が出来ていないかなど長期潮流を意識しなければならないですね。松尾さんは社会の長期潮流を意識されていますか?

転職した当時は何も考えてなかったですけど、介護のコンサルティングに入ったタイミングはすごく良かったと思います。介護サービスが量的に充足した状態で、今度は質的にどうかという問いが出てきて、成果に基づく評価へと移行しているので、この流れに乗れたと思います。

結果的に長期潮流と転職のタイミングがマッチしたということですね。
ちなみに、転職した方って、理学療法士協会を退会している人が多いんです。あえて、松尾さんが継続されている理由って何ですか…?

理由はひょんなことからなのですが、自分が学んだ大学の先生がよく言っていた「心はフィジカルセラピスト」、という言葉が強く印象に残っているんです。現在の職場でも理学療法士という資格は全く使ってないですけど、”ベースは理学療法士だ”という感覚があるんですよね。だからこそ、理学療法士協会を辞めていないのかなと思います。

「心はフィジカルセラピスト」、いい言葉・・・。

また、理学療法士協会への貢献も考えています。現在理事をされてる方に大学の先輩がいて、彼から協会での活動に協力してほしいと言われたとき、協会の会員でないとできないと感じました。金銭的なメリットはないかもしれませんが、”人との繋がりや貢献したい”という気持ちがあるから継続しています。もう一点、定期的に届く学会誌で、知ってる人が学会発表をしているのを見ると、それが刺激になるんです。そういった人たちが活動している様子を見ると、自分も何かをしたくなるんですよね。

ありがとうございます。
改めて理学療法士の経験が、今のお仕事にどう活きているかを教えていただけますか?

2つあります。1つ目はコミュニケーション。理学療法は大いにコミュニケーション技術が必要だと思います。患者さんとの会話、看護師さんに難題をお願いする、栄養士さんと戦略を練るとか、結局それら全てにコミュニケーションが必要ですよね。それが人間関係を構築する上で大事だと感じていましたし、自分はコミュニケーションが好きで、多職種とコミュニケーションを取ることばかりやっていました。
 
そして、それが今は仕事として外国人や地域の日本人、あるいは企業の方とコミュニケーションを取りながらヒアリングを行っています。だから、理学療法士としてのコミュニケーションの経験が今に活きていると感じます。

もう1つはどうでしょう?

2つ目は、PDCAの考え方です。理学療法の中でプランをたて、運動療法を行い、それをアセスメントするという流れは、まさにPDCAの思考ですよね。これは対人間だけでなく、地域や他の何にとっても大事なことだと思います。理学療法士のときにこれを考えていたから、論理的な思考を身につけることができました。

コミュニケーションとPDCAの考え方ですね。理学療法士として働いていれば、勝手に身についているものですか?

理学療法士の仕事で必須なスキルであるコミュニケーションは特に、多くの人が適当にやっているように感じることがありますね・・・。対患者、他の職種、あるいは実習生などへのコミュニケーションについては、質問や相槌、リアクションなど全てが意識的であるべきだと思います。腕が良ければいい訳ではなく、熱意が伝わるような意識や伝え方が大事と思っています。

僕も今、自分がしていることが役立つ場面を想定してコミュニケーションをとっているかどうかで大きく差がつくと思っています。そこが見えているかどうかで熱意が変わってくるかなと。最後に恒例の質問になります。松尾さんにとって「ジユウニハタラク」とはどういうことでしょうか?

事前に頂いたこの質問、悩まされましたよ(笑)
“自分が面白いと思ったことに全力で時間を使える状態”がジユウニハタラクだと思っているんです。例えば、友人が保険外のリハビリを始めたいと言った時、私は半年ぐらい手伝いに行くよ、というような。あるいは、誰かが海外で事業を始めたいから手伝ってと言ったら、それに自分の判断ですぐにいける状態になりたいと思っています。つまり、面白そうだと思うことに時間を全力で使える状態、それが私にとってのジユウニハタラクということです。いつかそんな状態になってみたいですね。

これは最初にお伺いした「自分が面白いと思うことに躊躇なくすぐに行動できる自分でありたい」という松尾さんのビジョンとも一致しますね。
今回は松尾厚さんにインタビューさせて頂きました。ありがとうございました!!

PROFILE

  • 松尾厚さん

    2007年に理学療法士免許を取得。

    同年から10年間早良病院で勤務し九州大学大学院 医療経営・管理学専攻へ社会人入学。

    卒後は株式会社スターパートナーズへ入社し、医療介護のコンサルティングと脳梗塞リハビリテーション福岡のセンター長を務めた。

    2021年から公益財団法人九州経済調査協会へ入社し現在に至る。