ジユウニハタラク

育休中の大変さをママさん理学療法士に聞いてみた。

インタビュイー: 財前愛美さん
インタビュアー: 樋口周人

自分が母親になることで、患者さんの両親への声かけが変わった。

働きやすい職場と働きづらい職場って何が違うと思われますか?

まず働きやすい職場で言うと、気遣いができて、お互いが⾼め合っていけるところは、働きやすいと思います。過度な気遣いが負担になることもあると思うので、気遣いをする上では、やっぱり話し合ったり、お互いの意思を確認し合うみたいなことができていない職場は、うまくいかないと思います。

なるほど、気遣いや配慮をするにしても自己満足ではなく相手に対してこういう風に配慮しようと思ってるんだけどどう?みたいな会話があると良いという感じですね。

そうしてもらえると、過度な気遣いに対してこちらが申し訳ない気持ちになったり、本当はここまでできるのにと思っていることができずに、モヤモヤすることは少なくなりそうですね。
ただ中には、察してほしいと思う人もいると思うんですよね。そう考えると管理職の立場から声掛けするのって大変そうだなと思いますね。

これから結婚を考えている理学療法⼠の⼥性にアドバイスするとするならどんなことがありますか?

この質問ものすごく難しいですね。今は色んな考え⽅があっていい時代になってますよね。もちろん結婚や⼦育てが全てじゃないっていう考えもあるとも思います。結婚をするということを考えると、時間の制約っていう問題が絶対に出てくると思うんですよね。なので⾃分としてどこで時間を作るかとか、作れないならパートナーにどうやって協力してもらえるかについては話し合っていてもいいのかなとは思います。

時間管理が自分ひとりの問題ではなくなってくるので余計にそうかもしれませんね。財前さんは息抜きをしたいときに旦那さんの協力を得ているとおっしゃってましたよね。
さきほど察してほしい人も一定数いるというお話しがあったかと思うのですが、参考までに自分から言いづらい体調不良のサインや無言のSOSってあったりしますか?

普段お昼寝しないような人が、職場で横になってお昼寝してたりすると、体調が悪いのかな、疲れてるのかなと思います。あとは最近マスクをつけるのが当たり前になってわかりづらくなっていますが、顔が真っ青だったりですね。産休前はよく顔色でバレてましたね (笑) この2つは周りのスタッフは気にかけてもいいのかなとは思いますね。

とても参考になりました。これからは財前さん自身のキャリアについてお話しを聞いていきたいと思います。例えば3年後くらいにこうなっていたいという想像とかされてますか?

具体的な想像が今はできていないというのが正直なところで、⼊職したときからずっとNICUで、リハビリさせてもらってるからいつかは、自分がやってきたことを形にできたらいいなとは思っていますね。あとはずっと同じ職場っていうよりかは、いつかのタイミングでは違うところに⾏きたいなという気持ちはありますね。ただ、土日祝日がお休みのところってあんまりないので、子供のことが落ち着いて、自分が動きやすくなってからやっと考え始めることなのかもしれないですね。

独身時代と結婚してからで価値観が変わったこととかってありますか?

人の優しさを感じるようになりましたね。あとは独⾝時代って⾔えば⾃分の時間は⾃分のものであって、例えば、夜遅くまで好きなことしたり、仕事したりとかしてましたけど、今は朝起きて家に帰って寝るまでの時間の使い方を考えるようになりましたよね。他にも仕事に対する考え方は大きく変わったと思います。

ぜひ、お聞かせください。

私自身、妊娠・出産を経験するまでNICUで赤ちゃんのリハビリをしていると、他職種との情報共有も赤ちゃんの事が多く、面会に来たご両親へはリハビリ中の赤ちゃんの様子をお話しするばかりでした。私は幸いな事に分娩中や産後も大きな問題は無く、母子ともに1週間程度で一緒に退院する事が出来ましたが、NICUにいる多くの赤ちゃんは数週〜数ヶ月程度入院します。産後のお母さんも傷の痛みや、安静期間の影響で廃用要素もあり退院されたからと言って体調が万全では無い中で面会に来られていた事を、点滴や呼吸器などが付いている我が子を見る母親の気持ちを、沢山抱っこをしたくても時間制限が設けられ誰かの許可が必要な事など、産後のお母さんの身体の状態や気持ちまで十分に考える事が出来ていませんでした。職場復帰後は赤ちゃんの事だけでは無く、ご両親の事を他職種の方々と情報共有をする事が以前に比べると増えましたし、面会中のご両親への声かけも変わりました。

自身が当事者になることでリハビリをしている以外の方の立場も考えることができるようになったことは素晴らしいことですね。

そういってもらえると改めて、出産・育児という経験をして良かったと思えます。

時間管理のほうにお話しを戻しますが、時間調整の難しい状況で理学療法士協会や研修会とにこういう制度があったら、参加しやすいというご意見はありますか?

学会であれば託児サービスとかあるので参加はしやすくなったと思います。研修会に関しては現地開催のときは参加できないことが多かったんですけど、最近はオンライン参加も可能でアーカイブでみることもできるのでとても助かってますね。

アーカイブがあるかないかでかなり違いますよね。研修会の開催時間ってちょうど晩御飯の準備している時間のことが多そうなので・・・。

本当にそうですね。ちょうど子育てに奮闘しているタイミングです (笑)

研修会つながりでお聞きすると、産休中・育休中に学会や勉強会に触れる機会ってあるのかなって純粋に気になったのですがどうでしょうか?

1⼈⽬の出産前とかはこまめにホームページを開いたりとか勉強会とか調べてましたけど、調べる回数とかもだんだん減ってきたっていうのが実際です。

実際、子育て中にそういう仕事関連に触れる時間や気持ちの余裕ってありますか?

正直言うと育休中だから、あんまり仕事のことは考えたくないというのが正直なところですね。気づけば、この勉強会があったのかっていうことが多かったです。どちらかというと⾃分が欲しい情報だけメールとかで来てくれると⼀番いいかなって思いますね。メルマガ的な感じで。

確かに、参加を申請する手間ももったいないと思ってしまいそうですよね。ただ医療業界も1年間休むと大きく変わりますよね?そういった中で、特に育休から初めての職場復帰をしたあとに、お休み中にこういうことやってたらよかったなと思うことはありましたか?

最初に職場復帰するときは評価とかリハビリがちゃんとできるのかなと思って、テキストを見返したりしてたんですけど、それよりも話し言葉ですよね。患者さんと話すのが最初難しくて、うまく説明することができなかったりすることがありましたね。礼節とかではなくて、社会的なコミュニケーションの取り方みたいなのが意外と難しいと思うことはよくありました。

初めての育休から職場復帰を経験する人にとっては、知識的なことに関心がいきがちなような気がするんですが、コミュニケーションの部分で感じたことというのは貴重な意見だと思います。
では最後に財前さんにとってジユウニハタラクとはどういうことでしょうか?

周りの気遣いを忘れずに、でも一人で頑張り過ぎずに、自分と家族を守れていることかなと思います。この質問とても難しかったです (苦笑)

最後に考えさせてしまって申し訳ありませんでした (汗)
本日は貴重なお話しありがとうございました。

PROFILE

  • 財前愛美さん

    2015年 理学療法士免許取得 その後大学病院へ就職し現在まで勤務。普段はNICUを中心にリハビリテーションを行い、赤ちゃんや両親のケアにも携わっている。現在2児の母