転職

警察官と准看護師を経験した理学療法士が語る仕事の魅力

インタビュイー: 江副浩一郎さん
インタビュアー: 樋口周人

理学療法士という仕事が一番面白く、やりがいがある。

ここまで警察官時代のお話しをたくさん聞かせていただきました。ここからは話題を変えて、警察官から理学療法⼠への転職を考えたタイミングについて、伺いたいと思います。単刀直入になぜ理学療法士への転職を考えられたのでしょうか?

1つは家庭の事情で、地元である福岡に帰らないといけなくなったんですよね。そのときに警察官が地⽅公務員なので、福岡に戻って警察官を続けますっていうことができないんですね。またイチから警察学校からやり直さないといけないんですよ。皆さんご想像の通り、警察学校って軍隊みたいなところなんです (笑) なので、さすがに30歳になってもう一度警察学校からのやり直しはきついな・・・という感じですね。

しかも給与の条件も当然落ちますよね?

そうですね。そこも大きかったです。それともう1つの大きな理由は、交番勤務をしていた頃って、人の死に目によく会っていたんですよね。それは事件もそうだし、事故もそうだし、警察官という仕事をしてなかったら、こんなにも⼈の死っていうところに関係することはないだろうなっていうぐらい遭遇していたので、もしも警察官と別の仕事をする機会があれば、⼈の健康を助ける⽅の仕事っていうのをしたい気持ちがあって、そのときに⼀番に医療従事者っていうのが⾃分の中で出てきたんですよね。

死ではなく生を扱うお仕事をしたいということですね。

そうです。その中でまず看護師だったら自分が思っていることができるんじゃないかと思って、最初に准看護師科に⾏きました。

え!? そうだったんですね。すみません。それは存じていませんでした。

実は・・・って感じですよね。ただそこからなんですけど准看護師の臨床実習の中で、理学療法⼠の先⽣⽅とお話させていただく機会があって、その仕事がどういうものなのかっていうのを⾒ていくうちに、⾃分にとっては看護師よりも理学療法⼠という仕事の⽅が合ってるんじゃないかっていうのがあって、理学療法⼠を⽬指したっていう感じです。

そこで、最初准看護師で⼊られてるわけじゃないですか。途中で、学校を辞めたということになるんでしょうか?

いえ、准看護師はちゃんと免許まで取りました。そこから今度、准看護師として働きながら、看護科に⾏って、看護師の免許を取る人が多かったですね。なので私は、看護科ではなく、理学療法⼠になるための養成校へ准看護師として働きながら⾏かせていただきました。

そこで、理学療法士を目指すということに舵を切るという行動力が凄いと思うのですが、どなたかに相談したりとかはあったのでしょうか?

私が恵まれていると思ったのは、先⽣⽅も当然看護師なので、看護師になってほしいっていう雰囲気なんですよね。当時、私の担任をしてくれていた先⽣に、理学療法士になりたいんですって相談をしたときに、「あなたはそっちの⽅が合ってるかもしれないね」って言ってくれて、その先⽣が「ここだったら夜間部もあって働きながら通学できるよ」って、わざわざパンフレットを持ってきてくれたんですよ。

ものすごく良い先生ですね。

そうやって背中を押してもらってよかったなっていうのは、ありますね。感謝しています。

相⼿を尊重するだけでなくて、さらには選択を提⽰してあげるっていうのは器の大きな先生だなというのが分かります。大抵は所属組織が主語となるようなケースが大きいでしょうから。

今振り返っても、学生のことをよく見てくれている先生だったと思います。本当に先生が担任をしてくれていて良かったです。

警察官と理学療法⼠をどちらも経験されてきて、若い人におすすめする職業としてどっちを今だったら進めようと思いますか。FUree worKUは忖度なしなので、正直にお願いします。

“私は”ということであれば100%理学療法⼠です。

本⼼ですよね?

本心です。ここで別に忖度云々とか私はしませんので。ただそこは⾃分の価値観の部分もあると思いますので、あくまで個人の意見として聞いて欲しいのですが、仕事をするとかっていったときに、私の中で⼀番重要なのが”やりがい”というところなんですよね。もちろん私は家族もいるし、⽣活をしていく中で経済⾯というのは⼤切なことではあると思うんです。

最低限の経済的安定は大事ですよね。

ただ仕事って、⾃分のこれからの⼈⽣の⼤部分を占めていくっていう中で、⾃分がやりがいとかっていうのを感じられないものであれば、続かないし、⼈⽣そのものが⾯⽩くない。それと経済的なことっていうのを天秤にかけたときに私の場合は圧倒的にそのやりがいっていうところのウェイトの比重が大きいんです。それを考えると圧倒的に理学療法⼠ですね。

警察官を経由されているので説得力がありますね。

ただ面白いのが、多くの⼈に警察官してたんですって話をしたときに、9割の⽅が、「何でやめたんですか、もったいない」っていう⾔葉を掛けられるんです。警察官が公務員というのもあって経済的な部分とかっていう、⽣活の安定を考えての⾔葉なんじゃないかなっていうふうには受け取ってるんですが。

そういったお言葉を掛ける方は経済的安定にウェイトを占めてるのかもしれないですね。

ただ、私がそのときに返すのが、「いくつか私仕事をしてきましたけど、その中で今のこの理学療法⼠っていう仕事が⼀番⾯⽩いです。何も後悔してません。」っていう話をさせていただくんですよね。

これは最初から理学療法士をしている人にとってはとても嬉しいお言葉なんじゃないでしょうか。

当然ですが、その9割の⼈っていうのは、警察官されてない⽅ばかりなんですよ。だから、業務の中⾝を⾒なかったときの価値観でいうと、もったいないっていうことになるかもしれないですけど、実際に中も外も経験した私にとっては、100%理学療法⼠が良いと断言できます。

さきほどから”やりがい”ということを強調されていますが、どの点において警察官のときに比べてやりがいが上回っていたのでしょうか?

⼀番は、理学療法⼠をしておられる先⽣⽅皆さん経験をしていると思うんですけど、⾝体の状態が低下しているところから、機能を回復させて、退院や社会復帰っていうところに繋げていくっていうところで⾔うと、ほとんどの患者さんから「ありがとう」という⾔葉をかけていただけるんですね。

ありがとうと言われていることに慣れてしまうくらい感謝されますよね。このお仕事は。

これって⾃分の中ではものすごく⼤きいんです。というのが、これはその警察のときっていうのも繋がるんですけど、例えば警察官の仕事として交通違反の切符を切ったりとかっていう仕事があるんですけど、ほとんどの違反者から「ありがとう」ではなく”文句”を⾔われるんですよ。自分の仕事を全うして”感謝”される、一方で”文句”を言われるということを考えたときに、自分だったらどっちの仕事を選ぶかってことですよね。

対極的な状況を経験したからこそ感じれる、当たり前のありがたさってありますよね。

ちなみに警察官が経済的に安定しているっていうお話しですが、私から言わせてもらうと、あの業務内容を、このお給料ではとてもやないけどやってられんよっていうのが本音です。警察官って気の休まるときがないんですよね。地域の人達には警察官ってわかってるから、いつも誰かに見られてる感じがして。加えて、仕事の内容も環境もハードなので大変なんですよ。

ここまでのお話を聞くと、理学療法⼠がどれだけ良い仕事かということが俯瞰的に理解することができました。今のお仕事についても目を向けていきたいのですが、現在は新中間病院でご勤務されていると思うのですが、どういった⾯で新中間病院を選ばれたのかなっていうのが気になります。  

PROFILE

  • 江副浩一郎さん

    1997年 京都府警察巡査拝命
    2006年 八幡医師会看護専門学院 准看護師科入学
    2008年   准看護師免許取得
    2008年 小倉リハビリテーション学院
    理学療法学科夜間部 入学
    2012年 理学療法士免許取得
    2012年 新中間病院へ入職

    警察官として2000年の沖縄G8サミットの警衛警護や交番勤務、留置管理官など8年間の勤務を経て、医療従事者への道に進むべく八幡医師会看護専門学院准看護師科へ進学。
    臨床実習での理学療法士との関わりの中で、その魅力に惹かれ、准看護師免許取得後に准看護師として病院で勤務しながら小倉リハビリテーション学院理学療法学科夜間部へ入学し、理学療法士免許を取得する