ジユウニハタラク

住まいと暮らしをコーディネートしwell-beingの実現を目指す

インタビュイー: 天米穂さん
インタビュアー: 縄田佳志

臨床現場での”気づき”が住まいづくりへの情熱を掻き立てる

本日は回復期病院から福祉住環境・バリアフリー住宅に特化した工務店に転職した異例のキャリアを歩んでいる天米穂(あまめみのる)さんにお話を伺っていきたいと思います。

よろしくお願いします。

最初は今までのキャリアについて話していただきたいです。養成校を卒業してから今までのキャリアをお話しいただけると助かります 。

はい、養成校を卒業して最初の就職先が北九州の回復期病院になります。回復期病棟にて、脳血管疾患や神経難病を有する患者さんの理学療法を担当する機会が多かったです。ロボットリハビリテーションや前庭リハビリテーションにも関心を持っていました。歩行の再学習を目的にトヨタが開発したウェルウォーク®︎なども活用したりしていました。丸4年間臨床に携わったのちに、現職へ転職しました。

以前勤めていた回復期病院から現職へ転職しようと思った心情の変化がとても気になります。そもそも転職が先にありきだったのか、それとも現職が魅力的で現職で勤めたいから転職を決断したのか。

そうですね。もともと学生の時は、地域に関わったり介護予防事業に取り組むために行政に携わりたいなと思っていました。その中で、前職が地域での活動に力を入れている病院というのを知って就職しました。住まいのことをメインに仕事をしたいなと思ったのは、2・3年目ぐらいですね。

前職で働くなかで、生活環境支援や住環境整備の重要性を身に染みて感じる機会が多かったです。その反面、ギャップを感じることも多々ありました。退院後の生活を見越した支援や整備が本当にできているのかなって。もちろん、入院中にケアマネさんを含め多職種とカンファレンスをしたり、家屋調査もしますが。それぞれの立場で解釈や捉え方が異なり、本当に患者さんやそのご家族にとって意味のあるものになっているのかと感じることがありました。解決するためにはよりシームレスに多職種連携を行う必要があって、その連携の部分をどうにかしたいなって思うようになりました。そこで、PTの立場として連携を推進していくのか、はたまた別のフィールドからアプローチをするのか。いろいろ考えていた時期が3年目ぐらいですね。インテリアには元から興味があったので、その時期から住まいのことを勉強したり資格を取ったりし始めましたね。

僕は急性期病院での勤務が長かったのであまり在宅支援に関わる機会がなくイメージがつきにくいのですが、そのような葛藤があったのですね…最後の方に資格も取ったりとありましたが、どのような資格を持っているんですか?

福祉住環境コーディネーターは学生の時に取得していました。ハウスキーピング協会が主催しているルームスタイリストという資格があるのですが、これは対象となる方の趣味嗜好や感じ方、お部屋の役割や目的に合わせて、お好みのお部屋にスタイリングができるようになることを目指す資格です。空間の見え方や感じ方、人の視点がどこを向きやすいのか、光や色、物の形状・感触といった要素が、人に与える影響を加味して空間づくりをしていく人材を養成するものです。

そんな資格があるんですね!!どういうきっかけでその資格を知ったのですか?

きっかけはインテリアリハビリテーション®を提唱している池田由里子さんです。池田さんは理学療法士とインテリアコーディネーターなどのライセンスを持たれていて、その池田さんと、作業療法士と二級建築士などのライセンスを持たれている久保田さんらが共同で執筆されている『リハビリテーション×ライフ』という本があるんです。その本を読んだ際に、まさに自分がやりたかったことに近いと思い、SNSのDMで池田さんに連絡しました。そこで池田さんが開催している講座をいくつか受講し、インテリアリハビリテーション®を学びました。また整理収納アドバイザーという資格も取得しました。同時に北九州市のインテリアスクールを紹介して頂き、そのスクールに通いながらルームスタイリストを取得しました。

資格取得を通じてインテリア関連で様々なことを勉強してきたかと思いますが、そこで得られた知識が日頃の臨床業務で活きたことや考え方が変わった点などありましたか?

そうですね。環境整備をする際に、これまではつい手すりの配置や伝い歩きなどの安全に移動するための動線確保などに意識が向きがちでした。ただ実際にその議論へ移る前に解決しないといけないことがたくさんあります。例えば、お部屋に物が散らかっていたり、そもそも物が多いなどの問題に直面します。また、手すりや福祉用具を設置することで住まいの雰囲気がガラッと変わります。自分の好きな空間に、見た目を考えずに手すりやお部屋の雰囲気にあっていない福祉用具が置かれることでQOLも下がってしまうんじゃないかなと思うようになりました。間違いなく自分自身だったら嫌だなと。

確かに、つい患者さんが自宅で歩けるようにという点にフォーカスして、手すりの設置を考えたりしちゃう気がします。

環境整備をするにあたって問題って実はたくさんあるんです…色々考えるうちに徐々に理学療法士として身体機能やADL能力に合わせた住環境整備の提案に加えて、整理収納やルームスタイリングを活用して、健康や安全は必須条件としながら、患者さんにとって素敵だなと思えるその人らしい住まいづくりや空間づくりを提案したいなと思うようになりました。その先にその人らしい暮らしがあるのだと思っています。 車いすが使える住まいだからといって、おしゃれや理想をあきらめる必要はないんです。

インテリアって聞くとついおしゃれな部屋を考えてしまいますが、バリアフリーな空間を作りながらもその人が住み続けたいと思う空間を作っていくのは確かに大事なポイントですよね。
少し話は戻りますが、天米さんの行動力すごいなと感じました。先ほどの池田さんへSNSで連絡取ったりするのも、連絡取りたいけどDM送るのはな…て思う人が多いんじゃないかなと思います。そういうのはあまり抵抗ない性格ですか?(笑)

性格はそうかもしれないですね(笑)
あとは、チャンスやご縁は巡ってくるものだと思うので、その時にそのことに気が付けたり、掴みたいと感じた時にすぐ動くための準備はするようにしています。

お。それは気になりますね。聞かせてください。

そうですね。例えば行動を起こす土台をつくるために、勉強したりアンテナを張って情報収集するなど、準備期間を設けることは常に意識しています。自分の中で考えを固める期間は必要かなと思っています。その話につながることとして、転職先を探す前から、現職のことは知っていて情報収集をしていました。現職が北九州市内で開催した車いす対応住宅の展示会兼セミナーに参加したり、Instagramを確認したり、たまにメッセージを送ったり情報交換をしたりして。

さすが、、、

本格的に転職を考え始めた時に、最初は福祉用具専門相談員としてレンタルや販売の事業所で働くことが選択肢として上がりました。ただ、自分がしたいことが本当にできるのかなという思いもありました。自分が本当にしたい働き方は、もっと広い意味での住まいづくり、空間づくりじゃないかと。葛藤している中で、ずっと現職のことが脳裏に浮かんでいるんです。しかしそもそも求人が出ておらず、ましてや理学療法士の募集も当たり前ですが出ていませんでした。そこで現職に僕が考えている構想や目指す働き方を長文メールで送って、一度お会いしてお話できないか交渉しました。そうしたら実際に会っていただけることになって、お話をする中でもうここしかないなと思い転職を決心しました。

これまでの話でいっぱい聞きたいことが、、、神崎工務店さんのInstagramを見て展示会兼セミナーに参加したって話があったじゃないですか。元々、Instagramをフォローしていたと思うんですが、きっかけは何ですか?

ははは。フォローした時は特に何も考えてなく、とにかく情報を集めたくて色々なアカウントをフォローしてました。そのうちの1つです。

色々とフォローしていた中の神崎工務店さんだったのですね。運命感じますね。

そもそもその様な取り組みをしている工務店自体が多くないんですよ。X(旧Twitter)やFacebookでバリアフリーやインテリアなどの発信をしている人を片っ端からフォローしていました。ただ、県内の工務店でヒットしたのは 現職だけでしたね。

福岡県理学療法士会からの案内です!
2022年度よりリニューアルされた生涯学習制度が始まっています。
生涯学習制度に関しても確認しておきましょう!

参考)日本理学療法士協会. 生涯学習制度について

PROFILE

  • 天米穂さん

    理学療法士
    福祉住環境コーディネーター2級
    ルームスタイリストプロ
    整理収納アドバイザー2級

    2018年 共和会小倉リハビリテーション病院へ入職
    2022年 株式会社神崎工務店へ入職
    2023年 一般社団法人0村CC設立(理事)

    住まいと暮らしのプランニング・コーディネートに従事。「らしさ」をあきらめない住まいと住まい方をテーマに、ものづくりに留まらない生活環境支援を模索中。その他「人口0人の村づくり計画」という活動を企画・運営中。