知られざる警察官時代の話し
本日は先生の異色のキャリアから理学療法士の魅力に迫っていきたいと思います。まず、はじめに警察官を目指したきっかけを教えてください。
幼少期に交番の警察官に落ちていた100円を拾って届けたんですよね。そのときに粋な計らいで、「ありがとうね」と言って自分の財布から僕に100円を渡してくれたんですよ。その時から警察官ってかっこいいなという思いがあったのと、公務員で安定しているという理由から、警察官を目指していました。
知っているようで、知らないので教えていただきたいのですが、警察官になるまではどういった道のりなのでしょうか。
まずは都道府県毎に採用募集があって、その採⽤試験を受けます。試験内容は筆記と体⼒試験があって、さらに⾯接もあった上で合格、不合格の通知が来て、合格すれば警察学校に行くことができるという流れです。
警察学校に行っているということは警察官の採用試験には合格しているということですね。
そういうことですね。私は元々北九州の⼈間なので、もちろん福岡県警を受けるわけなんですけど、実は福岡県警は落ちてしまったんですよ。ただ、警視庁、⼤阪府警、神奈川県警といった警察官の数が多いような都道府県については、他府県からも募集というか、⼆次募集みたいな形が取られたりしています。私は地元から出たくない⽅だったのですが、二次募集で京都府警から採用という連絡をいただいて京都で勤務にあたっていたという形になります。
警察学校を無事に卒業されて、警察官になってからのお話を伺いたいのですが、江副先⽣は警察官を何年間されて、どんな業務内容だったのでしょうか。
丸8年間になります。8年間でやった業務内容はというと、まず交番の勤務が4年。その後が特殊なんですけど、留置場で留置管理官というのをやっていました。留置場というのは拘置所の代⽤監獄ですよね。扱い的には拘置所と同じです。本来なら、被疑者を逮捕すれば⼤体拘置所に⾏くんですけど、いろいろ⼿続きがあります。その辺は割愛させていただきますが、拘置所の数が足らない等、諸々の事情により、身柄を待機させるための場所という感じで警察署内に留置場を設けているんですね。なので、勤務してる者は警察官なんですけど、警察官というよりも、拘置所の職員といった形の扱いにはなってきます。
専属なんですね。
そうですね。制約もあります。 例えば取り調べる刑事と留置場の警察官はその役割を明確に分けなければならないため、留置場内での話しを刑事とはしないなどがあります。
(なんだか話しがマニアックになってきたぞ・・・) 実際に先⽣が、犯人を逮捕したりとか⼿錠をかけたりとかしたご経験とかってあるんでしょうか?
ありますよ。ただ、刑事ドラマの中で、殺⼈犯とかに手錠をかけるイメージがあるかもしれないですが、本来はそういった凶悪な事件にならなくても、逮捕っていうのは、軽微な事件か否かに関わらず、その犯⼈が逃⾛する恐れがあるとか、証拠隠滅のおそれがあるなど、逮捕の要件に当てはまる被疑者であった場合には、⾝柄を拘束することができると法律で定められています。
実際ドラマでみかけるようなパトカー何台かで追跡したりとか、逃走する犯人を捕まえたりしたことってあるんでしょうか?
ありますね。ただ、現⾏犯逮捕の場合には誰が手錠をかけるかとか決まっていなくて、その場の状況次第で、臨機応変に身柄を拘束した者が手錠をかけるということになります。ちなみに現行犯逮捕は警察官でなくてもできます。
警察官として印象に残っている場面などはありますか?
印象にですか。逮捕とかとはお話がズレますけど、2000年7月21日に沖縄で行われたG8サミットですね。
(PCですぐに調べる・・・)え!すごい。プーチン⼤統領も来てますね。
こういったイベントというか世界の要人が集まるようなときには、全国各地の警察官が応援で⾏くんです。なかなかあのような⼤規模な警衛警護はないので、すごく印象に残っています。
沖縄にはどれくらいの警察官が集結したんですか?
2万人です (笑) しかも、人だけでなくパトカーなどの車両も必要なのでフェリーで何十台も来るわけですよね。沖縄って⼩さな島じゃないですか。そこに2万⼈警察官が集まったという事実。沖縄で、警視庁や大阪府警、福岡県警のパトカーが走り、国際的なG8サミットという大規模イベントを成功させるために警護にあたった警察官の一人として、あの光景をみれたのは壮観であったし、誇らしい気持ちになりました。
たしかに。福岡県理学療法士会の会員の4倍くらいの人数が1つの県に集結できるって凄いですね。
当時の私達の仕事って、各国首脳の護衛警護やテロ対策というのが大きなウェイトを占めているんですけど、地元の方からは「遠いところから来てくれてありがとう」と声をかけられて、来てよかったと思えましたね。
個人的に面白かった失敗談のようなことってあったりしますか?
あります。新人のとき、生活安全課というところで研修したときの話しです。覚醒剤の使用とか、そういった犯人を捕まえるような部署だったんですけど、無線で警察車両3台ぐらいで情報のやり取りをしながら犯⼈を捕まえるっていうので、よし!今から捕まえに⾏くぞっていう状況があったんですよね。捕まえるときに3台のうちの1台が犯人の車両にかぶせて停めて一斉に取り囲んで犯人を確保するんですが、「前の車が犯人の車を停めたら行くぞ」って助手席の私に先輩が言うんですよね。
本当にドラマみたい。
で、それを私に言われても何をしたらいいのか分からない。それでいざ犯人の車を停めました。その瞬間、私以外の警察官は、犯人を捕まえるために車外に飛び出していくわけですよ。そして逃走防止、捜査員の受傷事故防止のため犯人に手を挙げさせた状態で捜査車両の窓ガラスに両手をつかせるわけです。そうです。一人車内に取り残された私の目の前に、窓越しで私のほうに向かって手をついた犯人がいるのです。
(笑) それ、犯人と目が・・・
そう、合うんです (笑) お見合いです。傍からみたら、意味分からない光景ですよね (笑)
地獄絵図のような・・・
まさにそうですね。その帰りに先輩から「お前何やってんだよ」みたいな感じで声をかけられて、笑い話にしてくれたのでよかったんですけどね。
手荒な新人歓迎のような感じですね。
そうですね。まだ新人で、右も左もわからない状況で先輩達もそうなるとは分かっていたみたいで、それを聞いたときに、何もできず落ち込んでいたので、心が軽くなったのを覚えています。
確かに振り返ってみると面白いお話ですね。当時は全く笑えないのかもしれませんが・・・
良い経験をさせてもらいました。
ここまで警察官時代のお話しをたくさん聞かせていただきました。ここからは話題を変えて、警察官から理学療法⼠への転職を考えたタイミングについて、伺いたいと思います。単刀直入になぜ理学療法士への転職を考えられたのでしょうか?