第34回 福岡県理学療法士学会・大会長インタビュー

  • インタビュイー:音地亮さん
  • インタビュアー:脇坂成重

第3部 「未来に紡ぐために大切なこと」

■ 5年後・10年後のビジョン

5年後、10年後のご自身のビジョンはどう描かれていますか?

個人的には50歳までに英語論文を2桁に載せるというこじんまりとした目標があります。もっと若いころから頑張っておけばよかったと後悔しています。20~30代で学会発表や論文執筆をバリバリ取り組んでいる方には尊敬しかありません。後悔しても始まらないので、今自分にできることを一つ一つ取り組んでいきたいと思います。

組織をまとめていく立場としては、具体的には一人でも多くの認定・専門理学療法士が増えることや、学会・論文に力を入れること、社会に貢献したりと臨床業務以外でも結果を残せる人材を育成したいです。「臨床業務を頑張る」のはPT免許を持っているので当然です。そうすることで自ずと組織力や質の担保に繋がります。キーワードは「井の中の蛙にならない」ことです。一言で言うと「職場以外にPTの友達を作ってほしい」というのがメッセージです。

臨床と両立しながらですが、学術的には今が勝負の10年だと感じています。いずれ管理業務がメインになってもいいように、今から準備しておきたいですね。

ちなみに休みの日はどんな風に過ごされていますか?

休みの日は早朝に起きて論文を読んだり書いたり、学会や講演の準備をしています。もちろんですが家族との時間も大切にしていて、子供が3人いますが、一番下がまだ小学1年生なので公園に行ったりします。子供が起きるまでの時間が勝負です(笑)。

趣味の時間は取れているんですか?

趣味はお酒とキャンプです。最近はウィスキーが好きでいろんな銘柄を集めています。あとは、絶対に変と思われるかもしれませんが、今は「論文を書くこと」が趣味みたいになっています。でもそれが全然苦じゃなくて、本当に楽しいんです。自分の知りたい内容の文献を見つけたときはテンションが上がります(笑)。早朝に起きますが寝るのも早いので、自分なりにワークライフバランスは取れていると思っています。

■ 若い世代へのメッセージ

若い世代に向けて、メッセージをいただけますか?

1年目~3年目は職場の先輩の背中を見て学ぶ時期だと思います。でも3年目を過ぎた頃、自分が職場の中である程度動けるようになると、ふと気付くんです。「この先輩、職場ではすごいけど、外ではどうなんだろう」って。組織としては、先輩に対する尊敬の念がなくなると、たちまちパワーバランスや秩序が崩れていくと考えています。だからこそ、若い人には外の世界、学会や勉強会など広い視野を持ってほしいですし、先輩には学ぶ姿を見せ続けてほしいです。職場だけじゃなく、横のつながりや新しい刺激が、自分自身の成長に繋がります。

■ 影響を受けた人・大切な本

音地さんに影響を与えた人や言葉はありますか?

影響を受けた方は3名います。1人目は1年目のときに内部障害を教えてくださった職場の先輩の酒井先生。私の最初の師匠です(笑)。2人目は新小倉病院の入江先生。当時県士会で講演されているのを、各地まで追いかけて聴きに行ったくらい臨床感も学術面も目標にしている先生です。3人目は半田元PT協会会長です。ある講演の中で「PTが今後生き残るためには、臨床以外に圧倒的な学歴と実績が必要だ」という言葉は、自分にとって強烈なメッセージでした。それから大学院進学や研究活動に熱が入りました。今でも自分の中で大事にしていて、後輩にも伝えるようにしています。

そして、本で言えば山田英司先生の『変形性膝関節症・股関節症に対する保存的治療戦略』。学生時代に臨床実習でお世話になりました。後半部分に書かれている先生の学生時代の様子や、臨床に出て研究で成果を出していくまでの様子が赤裸々に語られています。自分にとってバイブルのような存在で、寝室に常に置いておりすぐに手にとれるようにしています。

■ 「ジユウ二ハタラク」とは?

このインタビューでは、最後に「ジユウ二ハタラク」とは?という質問をさせてもらっています。

「自由に働く」って、簡単なようで難しいですよね。たとえば、私にとっては、臨床や学術活動を通して自分の理想の働き方を少しずつ形にしていくことが、「ジユウ二ハタラク」に近いのかもしれません。

私自身の経験で言えば、まずは臨床でも学術でも、自分で目標を定めて、それを一つひとつ達成していく中で、「ジユウ二ハタラク」ということを意識できるようになってきた気がします。

もちろん、それを実現するためには、自分一人の力では難しいですよね。理解ある上司や同僚、そして何より家族の支えが欠かせません。論文執筆の時間など、どうしても家族に負担をかけてしまうこともありますから。

■ 最後に学会のPRをお願いします

今回の学会テーマは「イノベーション」なので、私たちもさまざまな新しい取り組みにチャレンジしています。たとえば、土曜日開催やオプション企画、キッチンカーの導入など、ちょっと“堅くない”学会にしたいなと思って準備しています。

「学会=お堅い」というイメージがあるかもしれませんが、もっと気軽に立ち寄って、何か一つでも学びや刺激を持ち帰っていただければ嬉しいです。夏開催ですし、友達を誘って、小倉の街で美味しいものを食べて、学んで、泊まって楽しんでもらえたら北九州も潤います(笑)。アクセスも良く、駅からすぐなので、ぜひ早めにホテルを予約して、ふらっと遊びに来てください!

音地大会長、本日はありがとうございました!みなさん、是非第34回福岡県理学療法士学会に足をお運びください!

Profile

音地亮さん

2005年に福岡新水巻病院入職。その後回復期病院や養成校の教員を経て、2019年に現在の北九州市立医療センターに入職。2025年4月より理学療法士長就任。

九州栄養福祉大学非常勤講師。

九州大学大学院 修士課程修了。

日本がん・リンパ浮腫理学療法学会、日本呼吸理学療法学会の評議員。

福岡県理学療法士会学術誌編纂部部長。日本理学療法士協会代議員。