第34回 福岡県理学療法士学会・大会長インタビュー

  • インタビュイー:音地亮さん
  • インタビュアー:脇坂成重
 

本日は、第34回福岡県理学療法士学会の大会長を務められる音地亮(おんじまこと)さんにお話を伺っていきます。音地さんどうぞよろしくお願いします。

 
 

宜しくお願いします。

 

第1部 学会テーマに込めた想い

 

早速ですが、今回の学会テーマ「イノベーション ~未来に紡ぐ理学療法のシンカ~」には、どのような想いを込められたのでしょうか?

 
 

今回、大会長を務めるにあたって、大会のテーマについて考えたのですが、「せっかくなら少しカッコよくしたいな」と思い、まず「イノベーション」というカタカナを軸に据えました。

今、理学療法の現場にはAIやロボットといった最先端技術が次々に導入されていて、これらは今後の医療において必須になるだろうと感じています。一方で、これまで先人たちが積み重ねてきた理学療法の基礎やエビデンスも、もちろん大切にすべきです。新しいものとこれまでの知見を融合させながら、理学療法の「シンカ」を感じられる学会にしたいと考えました。

 
 

「シンカ」はカタカナ表記にされていますね。どういう意図があるのでしょうか?

 
 

「シンカ」という言葉には、「発展」「深化」「新化」「真価」「新たな価値の創造」など、いろんな意味があると思います。あえてカタカナにしたのは、参加者それぞれが自分の感性で受け取ってもらいたいという想いからです。学会の挨拶文などにも「シンカ」という言葉を散りばめているので、どんな「シンカ」を持ち帰るかは、参加者の皆さんに委ねたいと思っています。

 
 

なるほどですね!「シンカ」に込められた大会長の想いを是非、参加者の皆さんに知っていただきたいですね。イノベーションによるAIやロボット技術によって、私たち理学療法の臨床は昔と比べて、変わってきていると感じますか?

 
 

正直、私自身はそうした設備が整っている環境で働いた経験は少ないので、臨床の内容自体は昔と大きく変わったという感覚はありません。ただ、考え方は確実に変化してきていますし、研究分野ではAIなどの技術がもはや不可欠になっています。現場での変化は職場の環境に左右される部分が大きいのではないでしょうか。

 
 

なるほど、設備や技術だけでなく、私たち自身の考え方や思考が「シンカ」することも大事ということですね。

 
 

その通りですね。技術の進化も大事ですが、それをどう使うか、自分たちの考え方をどう「シンカ」させるかが本質だと思います。

 
 

ちなみに学生教育の現場では、そういった先端技術への教育は進んでいるのでしょうか?

 
 

教育現場にはもう10年ほど前に関わったきりですが、その当時はあまりAIやロボットの話はありませんでした。今は、臨床実習で学生たちがそうした技術に触れる機会があるのではないかと思います。学校で教わっていなくても、学生自身がAIなどを活用して課題に取り組んでいるケースもありますし。そういう意味では、若い人たちはすでに「進化」して臨床現場に入ってきているなと感じます。

 
 

なるほどですね!学生さんや若い人たちの方がすでに「進化」しているというのは納得です。

 
 

次に、今回の学会には、特にどういった方に参加してほしいとかありますか?

 
 

もちろんすべての年代の方に来ていただきたいのですが、特に意識したのは中堅層、40〜50代の理学療法士です。今回どうしても実現したかったのが「若手PTに聞く」で、若い世代の活躍を見せる場を設けました。

この講演は若い人が刺激を受けるだけでなく、同世代や上の世代にも響く内容にしたいと考えました。今の理学療法士業界は、30代前半でもう管理職になっている人も多く、学会や勉強会から足が遠のく傾向があります。でも、本来なら働き盛りの私たち中堅層こそが、もっと積極的に学び続け、背中で引っ張る存在であるべきだと感じています。そういった気づきのきっかけにもなる学会にしたいですね。

 
 

若手が熱心だからこそ、上の世代の姿勢が問われる時代かもしれませんね。

 
 

本当にそう思います。今の若い理学療法士はとても真面目で意欲的な方が多いです。その中で、経験を積んだ私たちがどう向き合っていくか。新しい技術や考え方を取り入れる姿勢を持ち続けることが、理学療法全体の「シンカ」につながると思います。

 

■ ウェルビーイングと理学療法

 

他にも、面白いプログラムがたくさん企画されていますね。シンポジウムの一つに「Well-beingな社会に求められる理学療法士の深化と真価」がありますが、このテーマに込めた想いを教えていただけますか?

 
 

このシンポジウムは、学会部の部長の先生達と一緒に考えた企画で、理学療法の診療報酬、予防医学的な観点、地域支援など、さまざまな視点から今後の理学療法の「真価」を見つめ直す内容になっています。「深化」と「真価」は、表面的な技術革新だけでなく、理学療法の本質を掘り下げていくという意味も込めています。

ウェルビーイングは今や重要なキーワードで、病気を治すことだけがゴールではなく、その人の人生全体を豊かにすることが求められています。今回のシンポジウムでは、そうした視点を深く考えるきっかけになると思います。

 

■ 新たな試み 〜土曜開催・レセプション・キッチンカー〜

 

今年は土曜日開催やレセプションパーティー、キッチンカーなど新しい試みが多いですね。

 
 

はい、これは「イノベーション」の一環です。土曜日開催にしたのは、翌日が休みになるので参加しやすいだろうという考えからです。学会の次の日が休みって嬉しくないですか(笑)?レセプションパーティーも新たな試みで、学会後に参加者同士の横のつながりを深めてもらいたいと思っています。また、北九州国際会議場のスペースを活かしてキッチンカーも呼びます。学会はどうしてもお堅いイメージが強いので、勉強だけでなく楽しめる要素も取り入れたいという狙いがあります。

 
 

面白い取り組みですね。キッチンカーは特に参加者にも喜ばれそうですね。

 
 

レセプションパーティーでは、食べ物やお酒も出ますので、みなさま是非ご参加ください!

 
 

みなさん事前参加申込になるので、是非お申し込みください!

 

■ 大会ポスターに込めたメッセージとは?

 

大会ポスターも印象的ですね。矢印や光のデザインにはどんな意味があるのでしょうか?

 
 

ポスターの意図については、一部説明しますね。よく見ると海の中に「矢印」が浮かび上がります。矢印に気付いた人からは「イカに見える」と言われています(笑)。大会長講演で詳しくお話する予定ですので楽しみにしていてください。

 
 

すごく気になりますね!たしかにイカにも見えてきました、、、。当日の大会長講演楽しみにしています!

 

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Profile

音地亮さん

2005年に福岡新水巻病院入職。その後回復期病院や養成校の教員を経て、2019年に現在の北九州市立医療センターに入職。2025年4月より理学療法士長就任。

九州栄養福祉大学非常勤講師。

九州大学大学院 修士課程修了。

日本がん・リンパ浮腫理学療法学会、日本呼吸理学療法学会の評議員。

福岡県理学療法士会学術誌編纂部部長。日本理学療法士協会代議員。