「変える」を恐れない思考

  • インタビュイー:遠藤正英さん
  • インタビュアー:樋口周人

理学療法士としての原点:遠藤先生が歩んだキャリアの始まり

 

では、インタビューを始めさせていただきます。まず、遠藤先生が理学療法士になったきっかけについて教えていただけますか?

 
 

理学療法士になったきっかけですか?僕、漠然と医療業界には興味がありました。ただ、お医者さんになりたいとかそういった具体的なものではなく、母親から理学療法士という職業を勧められて、それがきっかけです。正直、高い志があったわけではありません。

 
 

医療職に対する漠然とした憧れはあったけど、具体的な選択肢として理学療法士が現れたということですね。他にも作業療法士や看護師などの職業もあったと思いますが、その中で理学療法士を選ばれた理由はなんですか?

 
 

そうですね。母親が「リハビリの分野がこれから伸びるらしい」と言っていました。また、就職にも良いと聞いていたのが理由ですね。

 
 

なるほど。そのような動機で始めた理学療法士ですが、学生時代のカリキュラムはかなりタイトだったと思います。どういったモチベーションでそれを乗り越えたのでしょうか?

 
 

正直、毎回ルーティンのようにいくつかの科目を落としていました(笑)。成績は普通程度で、進学できればいいという程度の意識でした。ただ、就職するなら「どうせなら1番になろう」という野心はありましたね。

 
 

その「どうせなら1番に」という思いは、学生時代に芽生えたものだったのでしょうか?

 
 

いやいや、なんでしょうね、例えばプロ野球選手になるために頑張ってプロ野球選手になる努力をしてるっていう人たち、いっぱいいるじゃないですか。我々、専門職、こっちに近いと思うんですよ。専門家としてっていうのが、僕にはそういうのがあんまりなくて。だって、ついた仕事であれば一生懸命やるのは当たり前だし。その先にモチベーション云々って、そんなもん自分で形成するもんだから。だから、僕のモチベーションは、理学療法の専門学校に入ったし、理学療法士になるっていうのが道筋だから、その上では、ちゃんと輝けるような人にはなりたいって思うのが当然なだけで、そこになんかの起因があってモチベーションがすごい上がったかっていうのはそもそもないから、仕事に向かう姿勢の違いだと思います。

 
 

なるほど。じゃあ一生懸命働くことが当たり前だというマインドがもうすでに学生の時からあったっていうことですね。

 
 

そうですね。

 
 

それを聞くと逆にそのマインドって、いつぐらいから逆に芽生えたんですか?

 
 

今僕、その話をしながら、なんでそう思ったんだろうなと思って。多分、父親の影響が大きかったと思います。父は非常に仕事熱心で、夜遅くまで働く姿を見て育ちました。その姿が「仕事とは全力で打ち込むもの」という考えを自分に植え付けたのだと思います。

 
 

次に、卒後のお話とかもお聞きしたいんですけど、その卒後に関しては、今言われた仕事に打ち込むのが当たり前だという精神で、何かを目標として打ち込んでたっていうことはあるんですか?特に新人1年目の時とか、理学療法士としてのキャリアを歩み始めた際、最初の数年間の経験について教えてください。

 
 

入職してすぐは、とりあえず1番になってやるとか、そういうのって空回りするじゃないですか。プライドが高かったと思います。だから上の人にも噛みついてたし、だからちょっと多分偉そうだったんじゃないかなと思いますね。ただ、その分やらないとっていうのはあったので、1年目で学会発表はもうしてたし、そこからもう毎年2演題は絶対出すと、そういうルールだけ決めてました。
でも最初の職場では、「若い人が頑張って学会発表して何の意味があるの?」みたいな空気があって、「頑張っても評価されない」という思いもありました。そういう白い目では見られてましたね。だからずっと空回りの5年間だったと思います。
その後、吉尾雅春先生の講演を聞いてリハビリの意義を深く理解し、臨床推論に興味を持つようになったことで、楽しさを見出せました。

 
 

そうなんですね。最初の職場で5年間働かれて、職場を変えられていますが、きっかけは何だったんですか?

 
 

1つ目の病院では上司との教育論の違いで対立がありました。上司とぶつかった理由は、若い子がいっぱい今から入ってくるから、ちゃんと教育体制を整えて、どういう風に教育していくかってピラミッド的な構造を作んないと、多分組織として脆弱になっていくから、若い人をちゃんと育成していけるような組織を作りましょうっていうとこでぶつかったんですよね。僕が転職したのは、そういう組織を作りたいから、最初に勤めた病院から今の職場に転職しました。

 
 

なるほどそんな背景があったんですね。そして、その次の転職された今の職場での話が僕が1番聞きたいところになりますが、その前に1つ目の職場では、誰かを巻き込んだり、院内の人を巻き込んだりして組織作りはあんまりされてこなかったんですか?

 

Profile

遠藤正英さん

2012年に桜十字福岡病院の前身・友愛病院に入職。病棟マネジャー、リハビリ部主任を経て、2017年からリハビリ部長。

柳川専門リハビリテーション学院、九州医療スポーツ専門学校の非常勤講師。日本理学療法士協会分科学会運営幹事などの役職多数。

2021年から、桜十字グループ福岡事業本部リハビリテーション統括。